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2010年8月19日木曜日

読んでいない本について堂々と語る方法

ピエール・バイヤールが書いた本。
原題は「Comment parler des livres que l'on n'a pas lus ?」
英訳は「How to Talk About Books You Haven't Read」

ネットでたまたま見つけた本だが、タイトルが面白い。
検索してみれば、あちこちに書評もある。

だが、読んでいない本について堂々と語る方法を、読んでから語るのは、フェアではない、と思う。

そこで、ここでは一切読まずに書くことを宣言する。
ただし、ちょっとだけ検索し他の方の書評などは参考にした、了承されたし。

さて、本書には、本を読まずに済ませる方法が書いてある。
そして、読んでいなくても相手を納得させる方法がある、と言うのだ。
誰も読んだことのない本であれば、読まずとも堂々と語れるだろう。
それが相手が読んでいるとしても出来る、と言うのだ。

相手を納得させるようなでまかせを言うのだから、相手については知っておきたい。
相手がその本を知っているのか、読んでいるのか、それとも読んでいないのか。
相手は一人なのか、複数人なのか、不特定多数であるのか。

いずれにしろ、どうせ話した内容の多くは覚えていない。
読んだ本のことを覚えていないのと同じくらいに。
それでも、印象は極めて強く覚える。

君が語る内容については直ぐに忘れるが、それをどう感じたかは忘れない。

何が書いてあることは言えなくとも、どう感じたかをはっきりと主張しておく事が重要だ。

さらには「細かい話はバレナイ」である。

誰も全文を暗記しているわけではないので(そういう人もいるが)、
細かい部分をでっち上げても、相手は記憶にないなと思ってくれるし、
そんな個所がない事を指摘されたとしても「勘違いで済ませて」おける。

ちょっとした著者の体験談、失敗談や、猫や犬を使った例え話、世間に知られたエピソードを
さも書かれていたかのようにはさんでおく。

さて、一概に本を読んでいないと言っても、例えば、いろいろある。

全く読んでいない場合もあれば、
頭の10ページだけは読んだ場合もある。
目次や解説書に目を通しただけのものもあるだろう。

これらは、読書感想文を効率よく書く場合に使う例の手だ。

本の著者と書名は、書いてある内容を知るための重要なエビデンスである。
雑誌の宣伝文句から内容を推察し、
国、時代背景、その時の思想について知っている事も推理に役立つ。

本書では、そういうノウハウをまるで推理小説を読んでいるかのように味わえる。
読んでいない事を読んだかのように欺くために、アリバイを作り、取調べでは裏を取らせない。

堂々と語るには、相手からの疑心、本当は読んだ事はないのではないですか、をやり過ごす必要がある。
読んだアリバイを示す必要があるのだ。

内容を語ること、文章の一部を示すこと、相手の質問に答えること。
これらの尋問をやり過ごさなければならないのだが、
そのために、著者は「相手から情報を引き出せ」と言う。

具体的な情報の引き出し方は、本書を読んで確かめて欲しい。

さて、本書で興味深いのは、そういうノウハウだけで読者の興味を引こうとしていない点だ。

このような実践例や体験談を通して、
本を読んだというは、一体何であるか、と。

さて、本を読んだはずの私よりも、読んでいない彼のほうが、その本についてより鋭い指摘をした。

本を読んでいい気になっているのは、一体どこの誰ですか、と問いかけてくる。
お前は本当に分かっているのか、と。

本など、読まずともでっちあげで十分でないか、
少なくとも、読んだ事を語りたいだけならば。

読んだ事は、本当に読んだ事になるのか、夢の中で読んだ本は、読んだ事になるのか。

そこには何かを伝えたいという想いがあるはずである。
面白かったことへの共鳴、考え込んだことの共感、新しい知識の共有。

何故、あなたは読書をするのですか、と言われるのは
面白いとは何ですか、と問われているのに等しい。

その本について読まずに語ることはできる。
だが、それが面白さかった事を堂々と語る方法はない、と言う。

面白さについて堂々と語るためには、書いてある内容からではなく、
それを受け取ったあなた自身の心に聞いてみるしかないからだ。

あなたの心が何を面白いと感じるのか、それはあなたにしか分からない。

何故、あなたはそれを面白いと感じたのだろうか。

そう著者は主張する。

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