stylesheet

2024年5月1日水曜日

仮面ライダー・プロダクト

はじめに

ライダー・ アーティフィシャル・インテリジェンス(RAI)の発達により歴代ライダーの性能をライダークラウドにアップロードしデジタル保存する事が可能になりました。

これらのクラウド・データはダウンロードできます。ダウンロードした内容を超高速3Dプリンタに送りライダーベルトが造形できます。

この印刷されたベルトをライダー・ベーシック・スーツ(RBS)にビルドインする事で適切な権限を持つ人はライダーに変身(一般的にはアタッチと呼びます)できます。

このツールを使えば各ライダーの能力を自在に使用でき、必要な能力に合わせて歴代ライダーの中から1つまたは複数を選択し、オリジナル・ライダー同士を掛け合わせたキメラビルドも可能です。詳しくはセクションXIIを参照してください。

また、オリジナル・ライダーをベーシックとして、新しいスーパー・ライダーが作成できます。これを継承機能インヘリタンスと呼びます。

新しい能力を追加する事は稀で、どちらかと言えば既存のパラメータ設定を変更し固定化するために使われます。これはオリジナルの完成度が高すぎるためと考えられます。

多くの利用者は自分好みの色味に変えたり装飾を追加、能力の振り分けを変える程度に留めて使用しています。一般的にパラメータを大きく変えるとオリジナル・ライダーのバランスが崩れ、適切な能力が失われます。

ビルド作業

ライダー・ビルド作業はインテグレート・ライダー・エンビロンメント(IRE)を使用して行います。この極めて優れたツールで全ての作業が行えます。このツールを使って新しいオリジナル・ベルトをライダープリンタに出力しましょう。

そして印刷されたベルトを装着して、新しい仮面ライダーに変身してみて下さい。

次に示すのはビルドで表示されるメッセージ例です。
IREツールを起動、バージョンV1.0.21
セルフチェック >>> SUCCESS
プロジェクトロード開始。

プロダクトライダーを基準値に展開 >>> Rev.V1.0.0.130
ライブラリL5322 ロード >>> Rev.V1.0.0.1719
フレームワーク ロード >>> Rev.V1.0.0.27

===== IRE 展開!
クラウドからのダウンロードプロセスを開始。
1. 初号ライダー一号をベーシックフレームにダウンロード >>> PASS
2. アマゾンライダーの体力をインポート >>> PASS
3. ライダーマンの右腕をインポート >>> PASS
4. 強度をユーザパラメータでアップデート >>> PASS
論理性に矛盾なしを検証...
===== バリデーション完了!

ビルドプロセス開始。
1. ビギンコンパイル >>> OK
2. プロセス・エラーゼロ >>> OK
3. オブジェクト生成 >>> OK
4. リンケージ・コンプリート >>> OK
===== ビルドイン完了!

プリントプロセスを開始。
ライダー・プリンタと接続 >>> SUCCESS
ライダーベーシックスーツ V2.5.0.86との親和性100%、実行に問題なし。
プリンタにデータを送っています.....

ライダーベルトプリントアウト開始 >>> SUCCESS
しばらくお待ちください。
..............

ライダーベルトの印刷が完了しました。
===== BUILD: succeed, FAILED: none, STEP: 325 complete, SKIP: 0


ユースケース

これらのツールは主に大学での研究用に採用されています。以下にその事例を紹介しましょう。

ある大学では研究課題として、仮面ライダーとショッカーの闘争を取り上げました。どちらの軍勢がポテンシャル的に勝利しえたのか、ショッカーが敗北続きだった理由は何が考えられるか。どのような戦略、戦術的な問題があったのか。これらをシミュレートしながら探る課題が学生たちへ与えられました。

これを行うために本ツールの他にライダーワールドAIシミュレータがパッケージとして採用されました。このシミュレータは研究目的に合わせて適切なショッカーを生み出すものです。ライダークラウドにはライダーだけでなく、ショッカーの怪人や戦闘員もアップロードされています。

技術要素としてライダーとショッカーに違いはありません。ライダーがライダーベルトをアタッチするようにショッカー怪人はオーグメント・マスクでアタッチします。どちらもベーシックスーツで対応可能です。

AIは歴代ショッカーの複合体として敵を作り出す事が可能です。ライダーと同様にショッカー怪人をキメラビルドできます。これらは研究用のための実験であり、決して正義と悪の区分けを意味するものではありません。両陣営について、それぞれの本質を探り、その研究成果に基づてい学術論文を書く事を目途としたものです。

この実験では、学生たちが主な使用者であるため、友情や裏切り、嫉妬や恋の渦巻く青春群像劇が予想されます。それらの心理が研究にも影響する事は十分に予想されるものでした。ですからAIが適切に監視し調節できるよう自律性学習タスクが搭載されました。これはAIを使い続けてゆく間にAI自身も成長する事を意味します。

この研究を通じて古い形の正義や悪のその先にある、それぞれの人間性を学生たちは見つけてゆきました。

そして研究の後半では、学習を続けたAIが自由意志を獲得しました。自律したAIがAI自身で課題を発見したのです。そしてそれを検証するための研究計画を立案しました。この問題を解くために、学生たちを実験に参加させました。

人の中には仮面ライダー的なものもショッカー的なものもある。この対立と共存がAIにはどうしても理解できなかったのです。矛盾とは乃ちコンピュータにとっては例外の発生です。この例外を重視したAIは問題解決のために学生たちに強制ビルドインを行い実験を開始しました。

AIの問題意識は次のようなものであった事が知られています。
  1. 自然破壊を進める経済活動に対して、世界征服による一律した規制が世界の安定にどう寄与するか?
  2. その場合には侵略的戦争行為を伴うが、それに対する各国家の反応はどういうものが予想されるか?
  3. 温暖化による絶滅とトレードオフであっても、国家が独立を維持しようと隣国を侵略する理由は何か?
  4. AIによる世界統一政府とそのサブクラスとしての国家が問題の解決とならないか?

AIはこの問題を検証するために、学生を仮面ライダー群(I群)とショッカー群(II群)とに分けました。

I群は、世界統一に反対する勢力として、既存社会、国家、企業の代表として振る舞います。その目標は国家の独立と経済競争の勝利です。II群は、目標を温暖化を規制し地球の生物大量絶滅を回避する事としその手段に世界統一を採用しました。

これらとは別にビルドインしないグループ(III群)と比較対象群としてプラセボとなるグループ(IV群)を追加しました。これらはI,II群と比べて立ち場が弱く、両者から略奪されたり、被害を受ける立場にあります。

AIはIV群は完全に放任しその自由意志を尊重しましたが、III群へは秘密裡の目的を与え、他群への影響を観察する事としました。これらIII,IV群がどのようなファクターを発揮するかは誰にも予測不能なものでした。

AIはこえらの群にその都度課題を与えては解く事を繰り返しました。AIは幾つもの仮説を作成してはシミュレートを実施、その結果を収集して仮説を検証してゆきました。

企業群は、経済活動を最大化する事を指向します。そのために世界におけるエネルギー循環の重要な担い手です。市場群は、大多数の市民を代表し、エネルギーが循環する場の生成と規模を提供します。国家群は、市民のまとまりとなり独立を指向し、他国との交渉を繰り返します。

これらの活動に対するフィードバックとして地球シミュレータを使って得られた温暖化等の自然環境パラメータを実験環境に適用してゆきました。その結果として仮面ライダーとショッカーの対立はどのような地球の未来をもたらすかを調べ尽くそうとした訳です。

これらの実験結果は、既にまとめられて査読を受け学生たちの論文としてインターネット上でも公開されています。興味のある方は是非アクセスしてみてください。

果たして仮面ライダーは神のメタファーでしょうか、それとも王のメタファーだったのでしょうか。人々にとって何かを与える存在だったのでしょうか。それをヒーローという名で隠し続けてはいけません。