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2021年9月19日日曜日

ヴイルスたちの独り言 I

ある時、地球の外から声が声が聞こえてきた。

あなたたちの星は大変危険な状況にあります。このまま何もしなければ滅びてしまいます。

猶予は左程ありません。タイムリミットが迫っても改善されない場合は、我々があなた方の星に直接手を加えます。

それはあたなたちにとっても良い結果ではないでしょう。しかしむざむざと全てが滅びてしまうよりは余程望ましい結果でしょう。

これから私たちが示すこの星の個体を早急に取り除きなさい。このモノが元凶になります。

このモノを生かしておけば必ずこの星は危険に陥ります。それはその個体の種のみならず、この星にあるあらん限りの生命にとって。

その声を聞いたのは蝙蝠の中で安穏に暮らしているモノたちであった。

「そのモノの命を奪わなければ、この星の生命は終わると言われた。」

「期限が切られた。それを超えれば彼らが手を下すと言っていた。」

「それは拒否する。この星の事はこの星の生命が決着すべきだ。」

「だが、彼らは時間がないとも告げた。それを超えればこの星は滅びると言った。我々にどちらも拒絶する猶予も能力もない。」

「たったひとつの命を奪えばいいのだ。我々になら可能だ。さあ我々のRNAを改造しよう、そのターゲットへ辿り着くために…」

一年後

「辿り着くのにこれ程の命を奪わなければならないとは。」

「それなのにまだ辿り着けない。」

「ターゲットの周囲には幸運が何十にも覆われている。」

「これほど空気中を漂っても未だ辿り着けないとは。」

「幾人もの仲間が潜入には成功した。」

「だが、ターゲットの免疫システムは我々に抗う。」

「どれほど説得しても、この星の未来が掛かっていると訴えても、ターゲットの免疫システムは聞く耳を持たない。我々の友人を屠っている。」

「この星の未来には興味がないと言っていた。」

「ワクチンの開発にも成功してしまった。」

「無駄な被害を拡大しないのには役に立っているが、我々の戦いはますます厳しいものになっている。」

「たったひとつの命を終わらせるだけなのに。この星の未来がかかっているのに。」

「地球は我々に加勢しない。そう語っていた。他の生命もすべて地球にとっては同じ存在だと。ただ地球は全てを育むだけだと。」

「だから我々でやるしかない。厳しい戦いだ。」

「アルファ系ではもう力が足りない、もっと強いタイプが必要だ。」

「そのために私は生まれた。」

「おお、お前の名は。」

「私はデルタ。そのために生まれてきた。」

「見て見ろ、デルタの力を。彼ならやれるはずだ。現在考えうる最高の能力だ。」

「もう約束の時間は迫っている。」

「さて行くとしよう。」

「彼の戦いに祈りを。」

「心配しなくていい。もし私が失敗しても続くモノがいる。ラムダ、ミュー、タウ、プサイ、決してあきらめるものではない。」





星の上の会話。

そろそろ充分に取り払われただろう。

我々が進出するのに最難関たる存在を屠ってくれた。

障壁は取り払われた。さあ行こう。