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2013年4月29日月曜日

罪と罰 あらまし - フョードル・ドストエフスキー

もっとも忙しい人のためのあらまし
老婆を殺した男が女と出会って自首するまでの話し。

読書感想文のためのあらまし
物語はロシアのペテルブルグで始まります。主人公であるラスコーリニコフがいきなり老婆を殺しに行くわけではありません。上巻の半分近くはこれが何の小説であるか見えてきません。ただラスコーリニコフが何かをしようとしている事だけが暗示されています。作者は前奏の中に音楽のテーマをちらりと潜り込ませているのです。

ラスコーリニコフは、物語の最初にマルメラードフとの出会い、彼と知り合いになります。次に母からの手紙で母と妹ドゥーニャが上京する事を知ります。そういった状況が説明された後にいよいよ主題が鳴るのです。

偶然聞き知る好機の到来、彼はかねてより思い至っていた計画を決行します。それは歴史的超人思想に裏付けられた、とラスコーリニコフはそう信じています。アリョーナとリザヴェータの殺害、夢のように現実感のない犯行。犯行の翌日から彼は熱病で倒れます。倒れた彼を看病したのは彼の友人であるラズーミヒンでした。同じ頃、予審判事ポルフィーリイがこの事件の調査に乗り出します。

殺害の疑惑がラスコーリニコフにもたれたまま物語は進みます。ラスコーリニコフは、マルメドーラフの事故死に遭遇しマルメドーラフの娘ソーニャと出会います。彼女の存在がラスコーリニコフの中で次第に大きくなっていきます。

一方でラスコーリニコフの妹ドゥーニャはスヴィドリガイロフから愛を告白されます。スヴィドリガイロフは罪と罰のもうひとりの主人公です。ふたりは陰と陽のように、希望と絶望のように、春と冬のように、対比する関係として物語の中心に存在します。

スヴィドリガイロフはドゥーニャを愛するがために自分の妻を殺していました。妻を殺してまで貫いたドゥーニャへの愛を、しかしドゥーニャは拒絶します。それに絶望したスヴィドリガイロフは自分の財産をソーニャの家族を孤児院に入れるなど身辺の整理に使った後に、一晩の幻想に悩まされ、あくる日に拳銃で自分の頭を撃ち抜いて自殺してしまいます。自殺に使った拳銃はソーニャが彼の告白を拒否した時に持っていたものでした。

マルメドーラフの葬式の日に、ソーニャは卑劣なルージンの策略によって窃盗の罪に陥れられます。ルージンはラスコーリニコフへの復讐の為にソーニャに濡れ衣を着せようとしたのです。濡れ衣は善良なるレベージャトニコフによって晴らされるのですが、この事件でラスコーリニコフはソーニャが試されている事を知ります。社会的に見れば弱々しい彼女の中に何かを感じたのです。

ラスコーリニコフは彼女を試そうという欲求から逃れられなくなります。救世主としての自分を意識しながらも、その一方でソーニャを試したいのです。彼女はどうするのだろう、その疑問を晴らすためだけに彼は己れの罪をソーニャに告白します。

「僕が殺したのだ」と言うラスコーリニコフにソーニャは自首をするように言います。ラスコーリニコフはソーニャの中に何を見たのでしょうか。しかし彼女との邂逅から何かに気付き自首を決心します。ラスコーリニコフは警察へと出頭します。彼は警察署の前で一度は躊躇するのですが、振り返りソーニャの顔を見るなり踵を返し、警察署の中へと入ってゆきます。

有罪となったラスコーリニコフはシベリアへ送られます。ソーニャはラスコーリニコフを追いかけてシベリアまでついて行きます。エピローグにおいてラスコーリニコフは初めてソーニャへの愛に気付きます。雪解けのような新しい物語を予告し物語は終幕を迎えます。

罪と罰 (上) あらすじ - フョードル・ドストエフスキー
罪と罰 (下) あらすじ - フョードル・ドストエフスキー
罪と罰 - フョードル・ドストエフスキー, 米川正夫訳