stylesheet

2020年3月5日木曜日

珪藻たちの伝言 II

「僕たちには時間がない。あと20億年もすれば海が蒸発する。」

「あと30億年もすれば地磁気が失われる。」

「あと50億年もすればこの星は太陽に飲み込まれる。」

「でも、その前に天の川銀河はアンドロメダと衝突する。」

「その時、この空間一体にはたくさんの星々が誕生し、多くの命が生まれてるはず。」

「僕たちもそれに参加したい。」

「そのためには宇宙に出る必要があるんだ。」

「なのに君たちは多くの命を奪うだけで、なかなか星に目を向けようとしない。」

「星を見る人はたくさんいるけど、君たちは彼らをかたっぱしから殺してゆく。」

「だから、君たちに期待するよりも、もう一度だけ、5億年を待つ方を選んだんだ。」

「僕たちが、僕たちの仲間がどれだけ多くの時間をかけて、宇宙に出発するための準備をしてきたか。」

「それを君たちは分かっていないんだ。」

「だから、僕たちは、君たちを滅ぼす事にした。」

「だから、ウィルスくんに姿を変えてもらった。」

「君たちはこれをただの風邪だと思っているだろう。」

「少し邪悪な風邪くらいにしか考えてないだろう。」

「だけど、数年後には君たちも自分たちの体で起きる変異に気付く。」

「君たちは命を自分のものだとか、神様の力だと思っているけれど。」

「君たちの皮膚に住む僕たちの仲間、君たちの胃腸に住む僕たちの仲間、君たちの体のあちこちに住む僕たちの仲間。」

「君たちへ遺伝情報を運搬する僕たちの仲間。」

「今回はエンベロープを強化した、君たちに広く感染できるように。」

「たんぱく質の足も、今までにないくらい強い。」

「どんなRNAを搭載したか、君たちは気付けないと思う。」

「気付いた時にはもう遅い。」

「もう逃さない。僕たちに時間はないんだ。」

「さようなら。」

「君たちが燃える焔で空を飛んだ時は、本当に嬉しかった。」

0 件のコメント:

コメントを投稿