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2015年9月7日月曜日

交換 - 経済 I

主題

貨幣発生以前を想像して、なぜ貨幣という信用が生まれたかを考えてみる。その過程で最初は価格はいま必要な分だけという考えから始まったはずである。しかし、いつの間にか、価格は万人に対して共通であるべきという認識が生まれた。

価格の発生

貨幣の前状態として、海幸彦、山幸彦の時代を想像してみる。海幸彦は海で漁をしている。山幸彦は山で狩りをしている。生活が豊かになればモノが余る。
  1. 生活(生産性)が向上する

モノが余ればお互いに行き来し往来が成立する。
  1. コミュニティ間で交流が成立する

モノの交換はとても早い時期から行われていたらしい。ネアンデルタール人の石器はほとんど変化していないが、同時代のホモ・サピエンスの石器は次々と変化しているそうである。

これは当時から異なるコミュニティ間でモノの交換が成立していたからだろう。技術が伝播するにはモノや情報の交換(略奪も含む)が欠かせない。誰かが工夫し、交換し、工夫の上に工夫が積み上げられた。

何度も交流すればお互いの間で信頼が生まれる。
  1. コミュニティ間で信頼が生まれる

魚と肉を交換する。どうすれば異なるモノの交換が成立するか。異なるモノの間で等価という価値の発見が必要だろう。交換可能なモノは等価でなければならない。魚と肉はどれくらいの量ならお互いに損していないのか。
  1. 交渉と合意の末、異なるモノの間に等価という概念が発見される

燻製などの技術革新によって魚も肉も長期保存が可能になる。これによって価値が長期保存できるようになった。生魚は数日で腐るが、燻製にすれば数カ月は価値を失わない。
  1. 価値を長期化する技術革新

燻製ならば交換して直に消費する必要はない。そうなると交換する時期の幅が広がる。今は必要なくても入手しておいて損はない。こうして未来を考える事ができるようになった。いま貯めているモノは何時ごろなくなるだろうか、それまでにどこで交換しておけばいいだろうか。こうしてより遠い未来を見据えた計画が必要となってゆく。
  1. 計画的に交換する

こちらにはモノがあるが、相手にない場合、従来は交換が成立しなかった。それでは機会の消失である。せっかく持ってきたモノのにまた持ち帰るのも徒労になる。お互いの間に信頼があるのならば、モノは置いて帰り次に来たときにモノを貰ってもよいだろう。こうして交換がその場で完結する必要はなくなる。時間差をおいて完結できるようになった。
  1. 交換を渡すと貰うのふたつに分離して考える

幾ら信頼していても、交換した量を記録して置かなければトラブルの元である。それはお互いにとって不都合である。不信感に陥ることなく、信頼を続けるためには、交換の履歴を記録するべきだろう。
  1. 交換の履歴を記録する

交換の記録が増えて行けば、A村との魚の交換、B村との貝の交換、C村との海藻の交換、とたくさんの交換の記録が溜まる。このとき、A村の交換とB村の交換を交換するという発想も生まれるだろう。
  1. 交換の記録も交換の対象となる

交換の記録は、交換相手がいつ消えるか分からない。病気の蔓延や事故など不測の事態が考えられる。個人と交換するのではリスクが高い。交換の相手を個人から村にすれば信頼性が増す。

最初の頃はモノの数量と誰とが記録されていた。A村のアさんとの交換の記録がある。これをB村のイさんに渡せば、アさんとイさんは直接交換することが出来る。それが村の名前になればアさんが居なくても交換できる。
  1. 交換の記録から交換相手が消えてゆく

何かが欲しい人は、そのモノを持つ人を探すよりも、記録を持つ人に相談する方が早い。

モノとモノの交換から記録と記録の交換によってモノが手に入るようになる。こうして交換の記録さえあれば誰からでもモノを入手できるようになる。相手への信頼が不要になって記録が信用できれば良い。
  1. 交換するのに相手への信頼が不要になる

こうしてモノと記録の交換が成立する。これはコミュニティ内でのみ通用するモノであるが、この記録の交換は拡大してゆくだろう。

こうして記録はそのコミュニティにおいて誰とでも交換可能なものになる。

記録が不正に改竄されないことをどうやって保証するのだろうか。この保証は交換する当事者同士では成立しない。不正がないことを保証できる第三者が必要である。それは改竄者を厳しく糾弾できるだけの力も必要である。
  1. 記録を保証するには第三者が必要である

交換の記録が貨幣に変わるためには何が必要だろうか。交換の記録では交換するモノが決まっている。そこで魚10匹と肉1kgの交換が同じなら、置き換えである。肉1kgが欲しい人は魚10匹の交換の記録を手にしてもいい。その考えが価格という概念を生むだろう。
  1. 価格が生まれる

交換の記録からモノの情報が不要になる。変わりに価格が記録されていればいい。価格を記録するための通貨単位が生まれるだろう。
  1. モノと相手の交換の記録が通貨単位に置き換わる

しかし価格が生まれると新しい別の問題が発生した。昨日までは魚10匹であった価格が今日は5匹になっているかも知れない。価格は日々変動してゆく。それでもモノの交換よりもずっと便利であった。何とでも交換できるお金の性質は手放されることはなかった。

交換には、自分のものを渡し、相手のものを受け取るまでに、必ず警戒しなければならない時間帯が生じる。この不信感の時間を長くする方向で交換は発展してきた。その最後に生まれたものがお金である。

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