出会ってしまった。
彼女の肌に触れてみるとシャリ、シャリ、シャリと音を立てる。これが耳にも指にも心地いい。そっと指を這わすとシュンと反応する。少し強めに叩いても気丈に反応する。底知れぬ強さと触れた時に淑やかさを持ち彼女はぶれようとしない。
まるで羽毛の中に居るようだ。この打感を知ってしまったら。心地良さとは決して激しい快楽ではない。さり気無さこそ心地よさの正体だ。彼女の気遣いを知ると他の女性たちはなんとも単調だ。
マイクロソフト キーボード Wired Keyboard
Microsoft キーボードも悪くない。打ち易いし価格もよい。デザインも打感も悪くない。素面のような淡白さがあって深い関係ではないが心強い仲間という感じだ。しかし。
サンワサプライ メカニカルキーボード
SANWA SUPPLY のメカニカルキーボードも決して悪くない。いいや今まで使ってきた中ではとても良かった。It was. その思いは今も変わっていないし変えようとも思わない。だが今では単調で色褪せて見えてしまう。これまで感じた気持ち良さは単調な刺激と思えて否定のしようがない。
東プレ キーボード REALFORCE
YK0100 は軽さとなめらかさ、湿り気を帯びた膨らみが優しく指を包み込んでくれる。A の音を立て U の声を聞かせる。CTRL と SHIFT が広がり Space が無垢の囁きで僕を捕まえる。その黒ずんだ秘部にそっと指をなぞらすと音を立てて彼女の声が打ち込まれてゆく。
この打感を知ってしまえば他の女となど交わる気もしない。気持ち良さも心地よさも今まで知らなかったと言っていい。彼女たちはただの穴に過ぎなかった。キーを押すだけのそれを受け入れるだけの穴だ。しかし彼女は違う。優しさと受け止め感がきちっとあって気持ち良く反応する。そして僕の指を押し戻す。優しさも激しさも兼ね備えたタッチは揺れてひとつひとつが跳ねるようだ。
多分もう戻れない。昨日まであんなに仲良かったのに僕は彼女たちを捨てた。この気持ちに後悔はあるが嘘はない。僕は彼女たちを捨て、そして君を選んだ。
君を一生で使う気だから僕は高いとは思わない。高い安いと考えるのはどこかで手放す気があるからだ。生涯使う気になれば価値観は変わる。よく使うもの、なんのこだわりもないけれどずっと使うから、普段は気にも止めないからこそ、心地よく手になじむものを置く、自然さとはそういう事ではないかしら。
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