28 - 15 = ?
これを筆算する時、位を分けてそれぞれの桁毎に引き算する。1 の位からは 8 から 5 を引く、10 の位からは 2 から 1 を引く。これは引き算というより筆算のやり方を教えている。位を揃えてそれぞれの桁で計算しなさいと言うのは、桁を揃える点が重要であって、それぞれの桁で計算する、を強調し過ぎるとその次で貸し借り問題が発生する。2 | 8 | |
- | 1 | 5 |
1 | 3 |
25 - 18 = ?
それぞれの桁で計算しなさいと言うと、5-8 が出来ない。15-8 を習っていても 5-8 は計算出来ない。1 | 5 | |
- | 8 | |
7 |
だから隣りから 1 を借りてくるのよと教える事になるのだが、この理解が難しい。ここで躓いてしまう子どもにこそきちんとした説明が必要だ。何故ならここで躓くのは結局のところ桁毎に計算するという教えをきちんと守ろうとしている子供だからだ。
2 | 8 | |
- | 1 | 5 |
? | ? |
参考:「繰り下がりのある引き算の10未返却事件」
お隣から借りてくる問題
筆算で桁毎に計算するとは縦の関係を守りお隣りと干渉しないと言う方法である。しかし桁上がりと桁下がりがあるのだから隣同士で全く干渉しない訳にはいかない。数のやり取り(繰り上がり、繰り下がり)は発生するもんである。筆算はより簡単にするために桁間の干渉を最低限にしようと工夫している、だけである。これを子供は一生懸命になって干渉が全くないと考える。そこで四苦八苦するわけである。桁が一杯になったらどうするか、全部無くなったらどうすればいいのか。桁とはまとまりの単位であり隣同士も干渉し合う。干渉は全くないという誤解は解かなければならない。
すると隣りにあるのは 2 という数ではなく 20 であると言う事も理解できる。筆算では 2 と書かれているが桁という考えが分かればただの 2 ではない事も理解できる。つまり 2 を借りてきたら、隣りでは 20 として扱う理由が子供には必要なのである。
借りてくるの理解が難しいのは、実生活において貸し借りの概念が形成される前だからである。大人でも貸借対照表が本当に分かっているのか、というくらいに貸し借りは難しい。小学低学年がおいそれと理解できるようなものではないのである。たぶんマイナスを教える方が簡単だ。例え人類史においてマイナスが貸借の概念よりも後から生じているとしても。
もちろんここで借りてくるという話はお隣から醤油や味噌を借りて来ての意味に近く、ここにある近所付き合いにおける借りてくるの暗黙のルールを子供が理解するのは少々骨が折れると思われる。
貸し借りの概念
さて、筆算を教えるには先ずは貸し借りの概念を教えないといけない。日本人が貸し借りの概念を知るのはこの引き算に於いてである。それ以外の方便は何かないだろうか。そこで次のような教え方はどうだろうか。桁毎で計算できない時は二桁で計算する。
25-18 を桁毎に引いてみる。しかし 5-8 ができない。そこで 25-8 で計算する、もしくは 25 は 10+15 なのだから、15-8で計算してもよい。
1 | 5 | |
- | 8 | |
7 |
一致団結
お隣から借りてくるのではない、相手の方が大きくて、自分だけでは戦えないから、お隣と協力して事に当たるのである。これは子供に道徳的な智慧を教える事にもなるし集団の一員としての自覚を促す事にもなる。5-8 が出来ないのでお隣と力を併せて 25-8 で計算する。すると答えは 17 である。一桁目の計算が終わったので 7 と書く。お隣もいっしょになって戦ったので残った力は少なくなっている。その余った1は、2(10の位)の下に小さく書いておく。次に二桁目の計算は 1 から 1 を引いて 0 である。答えは7となる。
いろんな解き方
25-18 は、25 から 8 を引き、次に 10 を引いてもいい。2 | 5 | |
- | 8 | |
1 | 7 | |
- | 1 | 0 |
7 |
25 から 15 を引き、更に 3 を引いてもいい。
2 | 5 | |
- | 1 | 5 |
1 | 0 | |
- | 3 | |
7 |
25 を 28 にしてから計算して最後に 3 を引いてもいい、
2 | 8 | |
- | 1 | 8 |
1 | 0 | |
- | 3 | |
7 |
25 を 20 で計算してから後から 5 を足してもいい。
2 | 0 | |
- | 1 | 8 |
2 | ||
+ | 5 | |
7 |
色んな方法がある事を教えた方がいい。
5-8 を -3 とし 20-10 で 10、-3+10 でもいい。
5 | ||
- | 8 | |
- | 3 | |
+ | 2 | 0 |
- | 1 | 0 |
7 |
借金の踏み倒し問題
筆算を貸し借りで教えるのは、結局は借金を教えるのと同じである。足りなければ借りてから返せばいいという教えである。まだ負の数の概念がないので、返せない時は借金できない。これは返せないのにサラ金に手を出してはいけないという価値観ともよく合う。しかし貸し借りの教え方ではその次の計算で道徳的に破綻する。15 - 28 = ?
どうしても引けない、だから負の数が必要だったのだ。この引き算を見て安心する子供が出てくる。なーんだ、借りてきて返せなくても別にいいんだ、ちゃんと答えが出るじゃんか。1 | 5 | |
- | 2 | 8 |
- | 1 | 3 |
借りてきても返せない、どうしても返せない時は答えをマイナスで出す。こう学んだ子供は大人になったときに引き算の按配で借金をする。お金が足りなければお隣から借りてくる、それでもダメなら借金をする。引き算では借りて来た 1 は返した記憶が一度もない。つまり借金は踏み倒せばよいという道徳観が醸造される。
まとめ
算数は運動と同じだ。例えば、スポーツにはルールがある、ルールを覚えないといけない。子供でも大人でも当然の事としてルールに疑問が湧く事はある。どうしてこのようなルールになったのか、そこには理由があるはずである。これを知る事は体育であれ算数であれ大切だ。次にスポーツはしてみなければならない。実際に体を動かして体験する事は体にとっても脳にとっても鍛えるという点でとても大切な事だ。これは算数も同じで実際に計算するのが大切なのである。公文式というのは、体育であれば実際に体を動かしていっぱいトレーニングしようというもので、ルールを体が覚えてしまうまでトレーニングを続けようという話である。布団の上で幾らクロールしても泳げるようにはならない。
仕組みを理解する事と使い方を覚える事は違う。お隣りから借りてくるもお隣と力を合わせるも仕組みの説明ではないし、使い方としてもひとつの方便に過ぎない。要は理解を助ければいいのである。
0 件のコメント:
コメントを投稿