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2024年12月25日水曜日

12月の配達便、遅延の恐れあり

サンタクロースは12/24の夜にプレゼントを配る地球規模の配送システムである。

これを実現するために、地球をメッシュ状に区切り担当区域を割り当て、特定の時間にひとつの経度に集中して配達員を配置している。

この時、地球の自転を上手に利用すれば、その位置に浮遊しているだけで、場所の方からやってくる。これによって効率的に移動する事ができる。

配達時間は特定のエリアに住んでいる子供たちの数と一軒あたりに掛かる配達時間の積で求まる。所が現実的に考えれば、高度に暗号化されたセキュリティの高い家屋もある。

そこを秒でハッキングし、ドアを開け、プレゼントを配置し、かつ侵入した形跡を一切残さずに退出する。

担当地域は数十キロから百キロの幅とは言え(この事からサンタクロースは\(20000/100=200\)人程度が投入されていると分かる)、一人当たりのプレゼントの総重量は凡そ数トンは下らないであろう。

都市部のサンタクロースともなれば数百トンはある。プレゼントの重さ500g * 子供の数1,000,000=500,000,000G=500t、コンバトラーVの重さが550tであるから、ほぼ一人で運搬していると考えて良い。これはたかが25mプールの水の重さと同程度である。

因みに戦艦大和は7万トン、瀬戸大橋40万トン、タンカーの積載量30万トン、新幹線16編成700トン、東京タワー4000トン、スカイツリー3万6千トン、像6トン、シロナガスクジラ200トン、ウルトラマン3万トン、マジンガー20トン、ガンダム60トン、エンタープライズ号320万トン、地球の大気5000兆トン、月7000京トン。

これらの中では非常に軽い部類である。とは言え、どうやって何百トンもの重さを光速に近い速度で運搬可能とするのか。地表に一切の痕跡を残さないで。

千トン近くの物質を光速で動かすにはそれなりのエネルギーを投入する必要がある。通常、エネルギーとは言うが、その実態は電気か酸化(酸素等を介して行われる電子のやり取り)による熱の発生である。

加速度を得るためには、気体への相転移や加熱による膨張(つまりは粒子が壁に当たる力)、それに伴う反力(当たったものを押し返す力)を得る事で実現する。光速ともなればそれは莫大であろう。

その莫大な膨張が発生すれば、地表に大気との摩擦が起きて竜巻が発生するであろうし、圧縮熱で周囲は炎が包む。衝撃波も生まれるから、大気をはぎ取り宇宙へ放出し、地表の深くまで伝わり、プレートをはぎ取り、マントルコアを剥き出しとするであろう。

相対論によれば、物質は光速に近づくほど質量が増大する様に見え、時間も遅れる。周囲に大きな重力波を生み出し、空間を捻じ曲げる。周辺には重力井戸が幾つも形成され地表にあるものは全て吸い込まてゆく。

これを現代科学で実現する事は不可能である。という事はどういう事だ?

プレゼントの配送システムの構築には、配達先の情報が必要である。サンタクロースはその地域に住む子供の住所を全て把握している。そうして前もってその子供たちの数のプレゼントを用意している。

これくらいに完璧な国勢調査が出来た政府はこの星には存在しない。サンタクロースは政府を超える情報を把握しているのである。どうやって実現しているのか?

地球の自転を利用したり地球の重力から逃れたり準光速で移動したり、それでも問題を起こさないテクノロジーをサンタクロースは持っているのである。

量子力学的知見、現代技術のセキュリティを数ピコ秒で突破するソフトウェア的情報処理能力、相対性理論と矛盾せず数百トンの物質を移動させるソリの製造、運用、整備。

これらの実現は、多世界解釈に基づく多元宇宙論的移動、分子レベルでの地球マッピング仮想空間モニター、四次元物質空間との素粒子交換、等が実用化されている事を示唆する。

人類にはまだ未知の科学、技術であり、これらのテクノロジーを門外不出の秘匿としてきた存在がこの星にはいるのである。サンタクロース、それは超絶技術を維持管理する団体、または家族なのである。

もちろん、太古からこれらの技術を狙い支配下に置こうとした王国が世界には数多存在してきたのであるが、それを狙ったが最後、悉く滅亡の運命を辿っている。

ムーもアトランティスもその伝承がある。凡そ16世紀の温暖化もその後の間氷期も単なる自然現象と考えるのは難しい。

一般にサンタクロースはキリスト誕生以降、使徒のひとりと考えらえているが、実際にはこれらのテクノロジーを考えれば、キリスト誕生以後のたった二千年で獲得されたとは考えにくい。

もしキリストがこのテクノロジーを与えたと仮定するなら、キリストが磔にされた真実と明らかに矛盾する。確実にこれだけの能力があったのなら磔は回避可能だった筈である。

あえてはりつきに行ったとすれば、彼のエリエリ、ラマ、サバクタニも矛盾しているように思われる。何かの意図があったと考えると余りに巧妙すぎている。

そう考えるよりも、キリストはサンタクロースが救い損ねた、または敢えて救わなかった一人であると考える方が余程得心が行くのである。

サンタクロース・テクノロジーは、キリストが生まれるずっと前からこの世界に存在していたと考える方が有力だ。ではその目的は?それがどうしてキリストと結びついたのか?

そう疑問に思ったジャーナリストが訪ねた。

一族の長はこう語る。

「あの若者はとても気持ちのいい男だった。彼と子供たちの未来を末永く見守ってゆくと約束したからだ。」

「では、あなたたちの本当の目的は何ですか、何をする為にこの地球に居住しているのですか?」

その質問は少し傲慢ですね、この地球はあなたたちの居住区ではない、どちらかと言えば、我々が先住民であり、それ以外の数多の生命たちのものでもある。

人間が支配者の感覚から抜けきれないのは仕方ないにしても、そろそろ自覚すべき時期にあると思いますよ、ええ。

ともかく、わたしたちの活動のひとつは地球に飛来する小惑星の破砕です。またマントルのスーパープルームを分散させたり、地磁気の逆転現象が安全に進むように制御もしています。勿論、我々にも数度の成功と失敗があります。

「失敗する事もあるのですか?」

ええ、その通りです。高度なテクノロジーは決して全てを成功させる保証ではありません。数千万年前に起きた小惑星の衝突はわたしたちの失敗の中では直近の事例のひとつです。その結果として大量絶滅が起きてしまった事には今でも忸怩たる想いがあります。

「今年のプレゼントに何か変わった点はありますか?」

今年は世界的な不況や各地の紛争のため、プレゼントを配るのに少し苦労しています。プレゼントを配ろうとする瞬間にミサイルが当たったり爆弾が降ってくるのをそのまま見逃すというのもなかなか辛いものです。

我々にとってプロジェクトの完遂が何にも代えがたい代償ですからね。その直前でそれを妨害されるのは流石に気分を害しますよ。

時に、ミサイルの軌道を変えてやろうかとか兵士を遠くに飛ばしてやろうかという誘惑に抗えそうにない時もあります。邪魔だから滅ぼすだけなら本当に簡単なんですけどね。

プレゼントを配ろうとする直前で配る事ができなくなるのは本当に本当に辛い事ですよ、と寂しそうに笑った。

「しかし、あなた方のテクノロジーをもってすれば、人類の戦争を終わらせる事は可能ではないですか?」

勿論、可能です。しかし可能は出来ると同じではありません。それは選択肢のひとつですが、いま選択するという意味でもありません。

もし戦争を終わらせるなら人類の自由意志を奪う事になります。しかしそれを今は望みません。

何故なら、自由意志を奪うという事は、その後を管理するのが我々だという意味になります。そんな面倒な事をあなたはしたいと思いますか。

あり得ませんね、そんな事をするくらいならいっそ滅ぼす方が簡単です。それも選択肢のひとつには含まれているのですから。そのような訳で現在は放任の一択なのです。

「でもそれでは人類が核戦争を始めてしまうかも知れませんが。」

それがあなたたちの希みなら可能な限りそれを尊重します。ただ、その時に我々がどのように動くかはあなたたちは知る事は出来ないでしょう。それは一瞬で終わる事ですから。

「今の人類が地球で起こしている様々な犯罪、戦争、残虐行為、環境破壊、動植物の絶滅、温暖化などを見てどのように思われていますか?」

わたしたちはそういう事象を見て心は動きません。厳密に指標を設定し指数に基づいた統計でこの星を制御しています。

「その閾値を超えた時にはどうなるのでしょうか?」

それについてあなた方が心配する必要はありません。心配しても防ぐ事はできませんから。そうなるまでは科学も哲学も数学もあなた方の自由にすればいいのです。

「もし、子供たちの願いが幸せなら、それを届ける必要があるとは考えられないでしょうか?」

成る程、あなたはいい事を言いました。そういう考えも可能です。

子供たちがおもちゃのプレゼントよりも平和を望んでいるという事ですね。平和をその子供たちへのプレゼントとするという訳ですね。

例えおもちゃがなくても、平和というニュースが届けば子供たちにとっての最上のプレゼントとなるでしょう。それはとても良いアイデアだと思います。

「では、最後に。あなたたちの現在の最大の懸念は何でしょうか?」

それは、この時期になると鳥が死に過ぎる事です。特に七面鳥と鶏が著しく大量死しています。もちろん、数的には大繁栄しているので絶滅の危機はないのですが。その数の多さについては心を痛めております。

あの若者は魚を好んでいましたが、鶏は好きではないと語った事があります、そこがわたしたちには不思議ですね。

記者が答える。

「わたしが個人的に思う事なのですが、彼は神の子ではありますが、わたしたちは羊だったり麦だったりします。だから食性が異なるのは自然な事ではないでしょうか?」

なるほど。

そう答えてサンタクロースへのインタビューは終わった。

そういえば、と立ち去り際に小さくつぶやいた。

そう言えば、あの若者が子供たちを宜しくと言っていたと思っていたが、それは神の子という意味で言ったのかも知れんな。それには麦の子たちも含まれるのだろうか。まさかとは思うが、我々は勘違いから子供たちへプレゼントを贈り続けていたのだろうか。

その声は記者には聞こえていなかったが。

そう言えば、あの若者を見殺しにしたのは、彼が拒否したからだった、と思い出したような顔になった。

わたしはこれから酷い目に合うでしょう。それでも決してわたしを助けないでください。勿論、あなたがたの優れた船を使えばわたしを助ける事が容易い事は知っています。それでもわたしを見捨ててください。

なぜなら、あなたたちに助けて頂きながら切り開く未来はわたしたちの力で獲得したものではないからです。わたしたちは先の未来では自分自身を滅ぼすような愚かさをあなた方に見せるかも知れない。それもどうかそのままにしておいてください。自分たちの力でそんな事さえ解決できないのであれば、わたしたちは滅びるべきです。

わたしはきっと最後にあなたたちに助けを求めるでしょう。苦しさに耐えかねてきっと助けてくださいと言うでしょう。でもそれで心を動かさないでください。わたしを見捨ててください。

わたしは最後にあなたがたを試します。どうかそれに打ち勝ってください。それがきっとわたしたちが自分たちの未来を切り開く救いになります。どうか、どうか、わたしのこどもたちを見守り続けてください。

先ほどは嘘を言ってしまったかも知れないな。

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