強烈なキャラクターがある訳でなく、印象的なシーンがある訳でもない。河合克敏が描くどの漫画も日常を超える事はないが、いずれの漫画も面白いから不思議だ。
これらの日常は分野によって切り取られている。
- 帯をぎゅっとね - 柔道
- モンキーターン - 競艇
- とびはねっ - 書道
いずれも技術が支える世界を描く。技術が実在するから好き勝手に妄想を膨らます訳にもいかない。日常は決して超えられない。だけど日常の中でほんの瞬間に技が炸裂する。何もかもが僕たちの日常の中で起きていることだと訴えているかのようだ。
日常の瞬間の切り取り、この漫画の真骨頂だろう。だけどそれが魅力かと問われれば少し違うと思う。この漫画には優れた情報誌、業界紙としての面白さもある。そこに実在する人間がいて、生活がある。そこにほんの少しだけのフィクションを加える。そのフィクションも溶け込んでゆき、その一瞬のために丁寧に、じっくりと丁寧に日常を積み重ねてゆく、それはこの世界で生きる誰もが経験していること。
その日常のささやかな積み重ねが作者の技量であって、その素敵な腕前に僕たちは強固な信頼を寄せているのだと思う。この漫画を支えているものは作者への圧倒的なまでの信頼感だと思う。
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