定義
自衛隊には大陸に侵攻する能力はない。そのような整備計画もない。その点は帝国陸軍とは異なる。自衛隊に上陸戦は現段階では不可能である。装備はない。兵士が泳いで渡れるようなものでもない。台湾出兵、日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争が可能だったのは周囲に脅威となる海軍国がなかったからと考える。日本はそうなるように帝国海軍を整備した。自衛隊は防衛戦で能力を発揮するように設計されている。それでも中國の物量にはせいぜい一か月から三か月。それ以上の長期戦の備えはない。この点はウクライナとは異なる。
四方の海が日本に長期戦を許さない。敵に上陸を簡単には許さない代わりに、日本が他国へ進出する事も海が阻む。日本の防衛は海を最大限に利用する。防衛だろうと侵略だろうと、これが日本の地政学になる。
海上交通を阻めばこの国には飢えが待っている。その程度の事は秀吉の備中高松城の水攻めの頃から既知である。
シミュレーションの設定
このシミュレーションは中國が日本へ上陸するパターンで考える。中國が戦争する条件は、アメリカが参戦しない事。例え参戦しても後方支援にとどまる事。そして核使用がない事。
もし日本が先に戦闘を開始したら相手も引かないだろう。双方が同時に撃ちあった場合も同じになる。このような状況からのエスカレーションに対しては恐らく日米同盟は発動しない。それで両者は海戦だけで決着するだろうか?
諸島の奪い合いはしても上陸戦にまでは発展しないか?これを決めるのは中國の政治判断である。だがそうなるケースは極めて小さいと見る。だから自衛隊もそういう装備計画で運用している。
上陸戦の準備
海を挟んだ両国がどうして海を渡るのか、それを考えるのは後にして、開戦時のシナリオをシミュレートしてみる。ノルマンディ上陸戦は連合軍が1942年に計画に着手し、1944/06/06、嵐の翌日に決行した。上陸作戦は多くの準備を要する。準備期間も長い。諸島の奪還も無計画で実行できるものではない。
作戦機、艦艇数、戦車の数比は、1500vs300機、300隻vs100隻、5000両vs300両であり、中國は物量だけでも押し通せる。
だが実際に戦闘を開始するなら最初にインフラを破壊する。インフラを破壊して軍の行動を制限し遅延させる。
巡行ミサイルを使用し鉄道網、幹線道、高速道路のトンネルと橋を破壊する。新幹線の駅を破壊する。主要な港湾を破壊する。空港を破壊する。占領をする必要はない。簡単に再建できない程度の被害を与える。
上陸戦を行うなら九州を中心に考える。だから関門橋は破壊する。関門海峡も封鎖する。西日本の戦力を封じ込める。艦船は四国沖から迂回しないと東シナ海に出れないようにする。
陸上戦力の展開を遅延させるために中国、山陽、九州自動車道は破壊する。こうして九州への上陸戦を最大限に警戒させる。
そうして、物量に物を言わせて、山陰、北陸、越後、東北など多方面での上陸戦を展開する。その素振りだけでも日本の限界は超えておりパニックに陥る。
攻略の基本は、敵の迎撃能力を圧倒する物量を用意し、これで押し通す。
上陸前の戦術
自衛隊は中國軍の物量には対抗しえないから攻撃対象を絞る。その第一目標は空母になるか。これは戦術的というより、インパクト重視。戦後初の空母沈没はもしかしたら中國人民の気持ちに火を付けるかも知れない。真珠湾の二の舞になるかも知れない。正直、それは避けたい。日本の防衛は上陸前にどれだけ海底に沈めるかに掛かっている。そこで数千、数万の兵士を沈めるのを目標とする。
だがこれらは戦術であって戦略ではない。戦略は戦争の終結にある。それまで統治機構を維持する事が軍の役割である。
水上艦艇の方が早く戦闘能力を失うだろうから、自衛隊は潜水艦群を中心に展開する。太平洋側で補給し日本海側での戦闘を繰り返す。それを阻止するために中國も太平洋側に海軍を送り出すだろう。
ここでもしアメリカが太平洋側に防衛ラインを引き、そこで活動するなら、中國を東シナ海、日本海に封じ込める事はできる。
終戦の準備
終戦は如何にして両国の間に訪れるだろう。大日本帝国の戦争目的を分析できた人は皆無であった。世界中の誰であっても。帝国陸海軍と戦闘を繰り返していた中國の人たちもそうだし、日本政府だってそうだった。
自分たちでさえ戦争をする理由を知らなかった。帝国陸軍はコンコルド効果の心理で撤兵を拒否していた。ソビエトの脅威に対抗する為に大陸に緩衝地帯が必要だっだ。だがこれは戦争の理由ではない。自分たちが引かないための都合のいい言い訳だった。
勲章欲しさに将軍たちは戦争を進めた。こんな戦争を終わらせるのにどんな解析も無力だったであろう。人間の小さな欲望が原因だった。戦争をする主体がどこにもいなかった。
責任を分散する日本の仕組みがここでは裏目に出た。厭戦気分も持たず軍の指示に従って本気で本土上陸戦を行う気になっていた。冬の食料がない事を国民は知らなかった。知っていても口にはしなかった。既に大日本帝国は巨大な収容所だった。群れる小魚のとなってアメリカを迎え撃とうとしていた。
最後まで相手国に厭戦気分を生じさせるしか打開策はないと考えていた。これが帝国政府の方針だった。一撃を加えて講和へ持ち込む。それしか知らなかった。遂に海軍が解体されても本土上陸戦で一撃を加えると計画していた。
戦争の終わらせ方を知らない。それを決断する機構さえ持っていなかった。
終戦に向けて
コロナパンデミックの終盤で武漢市では隔離に反対し自由を求める暴動が起きかけた。それが政府を動かした。政権は常に、暴動、内戦、革命、国家転覆、クーデターを警戒する。または政敵に注目する。それらを知れば終戦への道が開く。中國市民の考えを知る。何に怒り、何に悲しむのか。どのように死者と向き合うか。
もし前大戦の恨みを晴らす事で終戦に向かうなら軍事行動で敗北しても構わない。遺体を回収し返却する事で対日感情が好転するなら可能な限りそうする。
空母も沈めない方がいいなら沈めない。常に中國共産党の関心事に注視する。団結させない事、不信をあおる事、戦果を出させない事、被害を大きくする事、経済活動を停滞させる事。どれが取るべき手段か?
多重の防衛ラインを引いて相手が兵を引くまで戦闘を継続する。海上で、沿岸で、海岸で、上陸後の拠点を。そうやって継戦を維持する。
上陸の目的
上陸戦を行うのは地域を占領する為である。占領後に何をする為か?占領に利益はない。多大な戦費を消費し続けるだけだ。のみならず占領地域の嫌悪は深刻である。二度と払拭できない程の禍根を残す。それでも上陸戦をする理由は何だろうか?現政権を倒壊する程度の小さな目的では全く割が合わない。
海外の批判も強烈だ。経済封鎖や制裁により市場から締め出される。何よりアジア圏に核保有の流れを生む。中國が上陸するような状況で核保有を検討しない国があるだろうか。
それでも戦争の決断とは何か?
帝国主義的な理由
占領は、歴史的には帝国主義が行ってきた。日本もかつては帝国主義の論理に従って東南アジアに侵攻した。なぜ帝国主義は占領するのか?それは帝国主義が第一次産業の経済政策だからである。
帝国主義はある地域の、農地、鉱山、水資源等の天然資源を略奪する。それは地域を支配しないと手に入らない。特に19世紀までは企業が未発達だったから国家が前面に出て軍を出動させ地域を支配するしかなかった。
その地域に済む人々は労働力である。地域の文化や慣習に興味はない。奪う以外に目的がないからである。帝国主義とは自然を略奪する経済体制であった。だから帝国主義は占領した。
その後に起きた資本主義と呼ばれる経済体制は、工業を主体とした経済体制になる。この経済体制に地域の占領は必要ない。企業にとって重要なのは大量の訓練された労働者であり、労働者を通じて形成される市場であり、工業に必要な水(河川)であり、資源を運ぶ物流である。資本主義にとって必要なのは都市だったのである。
20世紀には帝国主義と資本主義の間での戦争が勃発した。占領する理由が帝国主義にはあった。資本主義には占領する理由がなかった。どちらの経済体制が主流になるかを競う戦争でもあった。それを最も先取りした戦争は南北戦争だった。
日本には巨大な鉱山も油田もない。併せて企業が十分に発展した20世紀は自然の資源を略奪するより企業を現地で操業させ貿易する方が効率が良い。
企業にとって現地政府と良い取引ができれば十分である。それに抗う政権に対してさえ軍を送った例は少ない。情報操作を巧に傀儡政権を樹立すれば十分であった。
アメリカはアフガニスタンの占領には失敗した。何の利権もない地域では中心となる企業を立てられなかったからだ。
占領する戦争
21世紀の占領は、領土支配を目的とした帝国主義的な占領ではない。ウクライナとガザの戦争を開始した理由に安全保障を掲げるが、その実体は為政者が己の権勢を維持する為であった。個人が国家を使い市民を動員し侵略する。これらの戦争ではそれを支持する国民の存在が欠かせない。国民の支持があって初めて可能な戦争である。これらは市民が支持したジェノサイドである。ナチスでさえそれはしなかった。
中國は一度も帝国主義的な占領をした事はない筈である。人類史の中でも相当に古い段階で今にも続く統治思想を生み出した。徳、理、法、軍という其々の視点で考え抜いた思想体系を発展させてきた。ローマの統治と並ぶ安定をアジアに齎してきた。
もし、中國が権力闘争の、共産党の内政の、延長で戦争を始めるのなら、その相手は日本ではあるまい。台湾だろう。そしてアメリカは参戦しない。核保有国同士の戦闘は避けざる得ないから。だから、アメリカは自衛隊に派兵を要請すると仮定する。
核保有国と戦争可能なのは非核保有国だけである。21世紀の戦争はそういう構図になってしまった。
だが、と立ち止まる。仮に台湾に進軍するとしてもアメリカが分断と経済的優位を失いつつある現在に急進的に決断する必要があるだろうか?現在の為政者の寿命との相談して決断する必要があるだろうか。50年、それだけあれば戦争に訴えなくとも台湾統治を可能とする方法は3つ4つはあると考えられる。20年、あればアメリカの経済的優位は失われているだろう。
とまれ、今は戦闘のシミュレーションの途中である。
尖閣諸島攻略戦
自衛隊を台湾方面には近づけなくない。そこで陽動として尖閣諸島に派兵する。日本はこれを無視できないので自衛隊を送る。これで足止めになる。沖縄方面での活動が制限される。この戦闘は諸島攻略に成功しても失敗しても問題ない。足止めが戦略だからである。
台湾を取れば恐らく国際社会は許容する。同じ中國人同士という建前があるから。そのために国際連合で何度もそう主張を繰り返してきた。そして香港と同じ構図に持ち込む。
台湾の戦後
台湾有事が起きれば、多くの台湾の人々は国外へと脱出するだろう。避難船の護衛は自衛隊の任務となる。これらの多数の避難民はどこへ行くのか?台湾の企業、知的財産、人的財産の価値は高い。もし中國の製造業が台湾企業へ強く依存しているなら台湾侵攻は経済的にも相当に大きな痛手となる。だから台湾企業への依存度が中國の決断を左右する。
さて、これらの避難民に日本は自治区を提供できるだろうか。
戦後の模索
中國の一帯一路は中國とアフリカを結ぶ陸と海の経済圏に見える。それは潜在的な脅威であるインドの包囲網にも見える。いずれにしろこの地域に巨大な経済圏を樹立しようとする。それを脅威ととらえるか好機ととらえるかは別にして中國の莫大な投資は魅力的だ。自衛隊の活動範囲は今後はインド洋まで拡張するだろう。それは寄港地の確保と同義である。集団的自衛権の議論は避けえない。
そうして世界に展開して何をするつもりだろうか?アメリカは世界中に艦隊を展開する事でどのような利益を得てきたのだろうか?寄港地がある、活動拠点がある、それは重要な情報収集の拠点だった。
それを世界中に持っている事で、政府転覆や企業誘致、投資などに活用してきたと考えられる。しかしインターネット網の充実が情報の中心を変えた。世界展開する必要性は次第に小さくなりつつあるのではないか?
ウクライナの教える事
戦争を始めるのはたった一人で良い。為政者が市民を説得し議会の承認を得て軍を動員する。そうして巨大な官僚組織が動き出せばそう簡単には停止しない。戦争を終わらせるにはいつも決断が必要である。敵味方含めた大勢の決断がなければ戦争は終わらない。戦争を終わらせるには全員の参加を要求する。
この不均衡が戦争の課題であろう。
いまや戦争は権力者の個人的私怨から始まる。独裁だけでなく民主政体でもそれは変わらない。終戦が自分を引きずり降ろす以上、自ら戦争を止める事はない。保身のための戦争だから終われない。それは死が為政者を追い出すか、有権者がこれを引きずり降ろすまで。
だから長期戦に持ち込み為政者の退場を待つしか防衛側に手段はない。または核保有。これが21世紀の回答。そして拡散すれば必ず誰かが使う。それを切っ掛けに全員が使う。
現実的なこの星の絶滅に向けて。
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