M78星雲まで来た警備隊の隊員たちは驚いていた。
それまで聞いていた話と全く違ったのだから。
「私たちはあなたたちを責めているのではない。ただ説明して欲しい。」
「これは私たちが聞いていた光の国の姿とはあまりに違うのだから。」
「ハヤタがビートル事故に遭遇した時のウルトラマンが取った行動はまさに英雄のものです。」
「それだけではなく地球を襲う度重なる怪獣災害からも救って下さりました。当時の我々にはこの脅威と対抗する手段はなく、多くの異星人の侵略も退けてくださりました。それはあなた方のおかげです。」
「私たちは地球を代表してその感謝を伝えるためにここに来たのです。」
地球人は既にウルトラマンの力を借りなくても自力で怪獣に対処できるようになっていた。
宇宙への進出も果たした。自力で光の国に訪れるだけの科学力も獲得していた。
だが、目の前に広がるのは話に聞いてきた「光の国」ではなかった。
そこにウルトラマンの姿はなかった。ウルトラマンだけではなく誰も。ウルトラタワーもない。
周囲には巨大なシダのような植物が生い茂りまるでペルム紀の地球のようでもあった。
そこには透明の体でうねうねと動く軟体動物のような姿があった。
彼らはテレパシーで話しかけてきた。
「君たちが私たちの姿を目の当たりにする日がくるとは思ってもいなかった。」
「そうだ、私たちは君たちに隠していたことがある。」
「君たちがウルトラマンと呼ぶ姿はわたしたちの本当の姿ではないのだ。」
「私たちは君たちの体を借りて変態していたのである。」
驚いて隊長が聞いた。
「あなたたちの変身というのは、我々の体を利用したものだったのですか?」
「そうだ。我々は普段は人の背中に張り付いていたのだ。」
「必要があったとき、人間の体に沿って我々の体を伸ばす。君たちの体を覆い戦闘形態に変身していたのだ。」
「それならそうと言っていただければ良かったのに。」
「それは少し違う。当時の君たちが我々の本当の姿を見ればコミュニケーションは成立しなかったであろう。」
「我々は君たちの望む姿を知るために君たちの体に取り付く必要があったのだ。」
「謂わば君たちがいうところの寄生虫の一種だったのだよ。」
「わたしたちの偏見のせいだと言うのですね。」
「それはある。同じ人種間でさえ差別や争いの絶えなかった君たちに我々の姿を見せるリスクは取れなかったのだ。」
ある隊員が申訳なさそうに聞いた。
「私は前から疑問に思っていることがありまして。ひとつ聞いてもよろしいですか。」
「できる範囲で答えよう。」
「ありがとうございます。みなさんは地球にいるとき、食事はどうされていたのですか。」
「もう気付いていると思うが我々のエネルギーは太陽の光ではないのだ。」
「我々は人間の体に取りついて、その人間の考えを読み取り、その体から栄養を得ていたのだ。」
「なるほど、それでウルトラマンになる人間は食事量が増加するのですね。」
「その通りだ。」
さらにその隊員が聞いた。
「エースはふたりで変身していましたがどうしてですか?」
「エースはふたりでひとつの戦闘形態を形成していたからだ。彼の妻が単身赴任を嫌ったのでな。」
「単身赴任?しかし途中で帰られましたよ?」
「離婚したからな。」
隊長が話を遮って聞いた。
「あなたたちはやはり仕事として地球に訪れていたのですか。」
「それはその通りだ。我々は地球のある種の生物を研究するために訪れていたのだ。」
「それはどのような研究を?」
「地球には我々にとてもよく似た生物が居たのだ。」
「これは我々の進化とも何か関係しているかも知れない。そういう報告がもたらされたからね。」
「我々はこの生物を守るためにどうしても地球を保護しなければならなかった。」
隊長が強く聞いた。
「ということは守るべき対象は人間ではなかったという事ですか!」
「その通りだ。君たちには申し訳ないが。」
「その生物を研究するのに君たちの姿を借りるのがとても便利がよかったのだ。」
「地球を守ったのも人間のためではなかったのですね。。。」
「バルタン星人は我々と同じものを研究していてね。それで倒したのだ。」
「もちろん君たち類人猿に興味を持つメフィラス星人は倒したよ。それは君たちの利益とも一致するだろう。」
それまで考え込んでいた隊員が問うた。
「もしかしたら我々の敵になっていた可能性もあったのですか?」
「そうだな。」
「もし君たちが環境破壊を進めてその生物を絶滅させようとしたのら、我々は君たちと敵対したであろう。」
「幸い、そのようなことにはならなかったが。」
「十分な研究が終わったので我々は地球から離れた。」
「ほら見てごらん、あの辺りには地球から連れてきたその生命が繁殖しているんだよ。」
再度、隊長が聞いた。
「では最初のウルトラマンがハヤタ隊員と起こした事故もベムラーの脱走というのは嘘なのですか。」
「ああ、実を言えば、ベムラーは彼のペットだ。急に暴れて事故を起こしたのだ。彼は泣きながらベムラーを処分したのだ。」
ファーストコンタクトから何代にも渡って初めて知る真実であった。
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