ラスコーリニコフはスヴィドリガイロフと対話した。それは近況を報告する他愛もない話であった。スヴィドリガイロフとは金を持ち、遊惰と淫蕩の人間であった。ラスコーリニコフとは対比にあった。
あれはスヴィドリガイロフだ。妹が家庭教師を務めているとき、侮辱を加えた例の地主さ。あいつが妹の尻を追い廻しやがったために、妹は細君のマルファ・ペトローヴナに追い出され、あすこの家から暇を取らなきゃならなくなったんだよ。そのマルファ・ペトローヴナは、あとでドゥーニャに詫びをしたんだがね、今度とつぜん頓死したんだよ。P29
夜になってラスコーリニコフはラズーミヒンと共に母プリヘーリヤ、妹ドゥーニャの元を訪れた。そこでマルファ・ペトローヴナがドゥーニャに 3000 ルーブリの遺産を残した事、これでお金の心配がなくなった事を告げた。しかしルージンとラスコーリニコフの対立はどうしようもなかった。
「僕に言わせると、あなたなんかのありったけの美点を掻き集めても、あなたがいま石を投げているあの不幸な娘の、小指だけの価値もありゃしない。」
「するとあなたはあの女をご母堂や、ご令妹と一座させるだけの決心がおありですな?」
「それはもう実行しましたよ、もし知りたいとおっしゃれば申しますがね。僕は今日あの娘を、母とドゥーニャと並んで座らせましたよ。」P45
対話が続きルージンの本性が露わとなり、それを知った妹ドゥーニャは婚約を解消する。
「お前これでも恥ずかしくないのかい、ドゥーニャ?」とラスコーリニコフは訪ねた。
「恥ずかしいわ、兄さん。」とドゥーニャはいった。「ピョートル・ペトローヴィチ、とっとと出て行って下さい。」彼女は憤然にさっと蒼褪 (あおざ) めながら、彼の方へ振り向いた。P47
ルージンは去った。ドゥーニャとプリヘーリヤはラズーミヒンと話が弾んでいた。
「ちょっと僕どうしても行かなきゃならないいんだ。」自分のいおうとしたことに動揺を感じるらしい様子で、彼は漠然と答えた。P61
それはラズーミヒンと家族の温かさに当てられたのかも知れない、自分の罪が彼らに及ぼす影響を考えたのかも知れない。ひとつの問題が片付いたので安心したのかも知れない。いずれにしろ暫く会わない事をそこで家族に伝えたのである。
廊下は暗かった。二人はランプの傍に立っていた。一分ばかり、彼らは黙って互いに顔を見合っていた。ラズーミヒンは生涯この瞬間を忘れなかった。ラスコーリニコフのらんらんと燃える刺し貫くような視線は、あたかも一刻ごとに力を増して、ラズーミヒンの魂を、意識を貫くようであった。P63
ラズーミヒンは家族を託された。ラスコーリニコフにはまだ病気の治療が必要だといい、ラズーミヒンは家族を慰めた。
「あなたでしたの、まあ。」ソーニャは弱々しい声で叫び、釘づけにされたように立ち竦 (すく) んだ。P64
ラスコーリニコフはソーニャの部屋を訪れた。
「僕はお前の不名誉や罪悪に対してそう言ったのじゃない。お前の偉大なる苦痛に対していったのだ。」P78
『彼女の取るべき道は三つある。濠へ身投げするか、瘋癲病院へはいるか、それとも最後の方法として、理知を眩しい心を化石させる、淫蕩のただ中へ飛び込むかだ。』最後の想像は彼にとって最も忌まわしいものであった。P80
ラスコーリニコフはソーニャがこのままでは金銭的理由から堕落してゆくという現実を目の当たりにした。
『これが解決だ、これが解決の説明なんだ。』貪るような好奇心を抱いて、しげしげと彼女を見ながら、彼は一人で心に決めてしまった。P82
ソーニャの部屋にはリザヴェータが持ってきた聖書があった。ラスコーリニコフはラザロの復活をソーニャに朗読してくれるようお願いした。ラザロの復活。イエスが「ラザロよ、出てきなさい。」と言うと死んだはずのラザロが復活した。これはイエスを通して復活の予兆として語られてきた物語であった (この話しはカラマーゾフの兄弟へと続く)。
「イエスはまた心を痛ましめて墓に至る。墓は洞にて、その口のところに石を置けり。イエスいいけるは、石を除けよ。死せし者の姉妹マルタ、彼に言いけるは、主よ、彼ははや臭し、死してより既に四日を経たり。」彼女はことさらこの四日という言葉に力を入れた。P88
ラザロの復活を聞く事でラスコーリニコフの心性に何かが起きた訳ではなかった。しかし彼は話したくて堪らなくなった。
「僕はきょう肉親を捨ててしまった。母と妹を。僕はもうあれ達の所へは行かないのだ。あっちですっかり縁を切って来た。」
「今の僕にはお前という人間があるばかりだ。」と彼は言い足した。「一緒に行こうじゃないか。僕はわざわざお前のところへ来たのだ。僕らはお互いに詛 (のろ) われた人間なのだ。だから一緒に行こうじゃないか!」P89
それがふたりを繋ぐと感じたのだ。そして告白することを予告してそこから立ち去った。
「まぁ一体あなたは誰が殺したのか、知っていらっしゃるの?」P92
翌日、質草の説明をするためにラスコーリニコフは警察の予審部を訪れ、そこでポルフィーリイと二度目の対話をする。そこで自分に嫌疑がある事をはっきりと知る。それは人間がぎりぎりで騙し合う戦いであった。
思いがけない贈物は、そら、あすこに、扉の向うのわたしの住いの方にいますよ。へ、へ、へ!(と彼は自分の官舎へ通ずる、仕切り壁に設けた閉った戸口を指した)。逃げて行かないように、鍵をかけて閉じ込んどいたのです。」P125
「貴様は嘘ばかりついているんだ。おれに尻尾を出させようと思って、人をからかっているんだ。」P126
この贈物とはラスコーリニコフに向かって「人殺し」と言った者に違いなかった。何故ならその者こそが決定的な目撃者に違いなかったからだ。しかし、扉の向うから出てきたのは違った。ニコライが飛び込んできて告白を始めたのだ。
「悪うございました!あれはわっしの仕業なので!わっしは人殺しでございます!」と不意にニコライは、いくらか息をはずませてはいたが、かなり高い声でいった。P129
ニコライはせき込みながら、前から用意しておいたらしくこう答えた。
「ふん、やっぱりそうだ!」と憎々しげにポルフィーリイは叫んだ。「肚にもないことを言ってるんだ!」と彼は独り言のように呟いたが、不意にまたラスコーリニコフが眼についた。
「あなただって思いがけなかったでしょう。ほうら、手が、こんなに、震えている!へへ!」
「それにあなたも震えていらっしゃいますね、ポリフィーリイ・ペトローヴィッチ。」
「わたしも慄(ふる)えていますよ。あまり意外だったもんですからね!」P131
ラスコーリニコフは真っ直ぐ家に戻った。考え事をしているラスコーリニコフの所にあの男が扉を開けて入ってきたのである。彼はラスコーリニコフに詫びた。彼はたんにラスコーリニコフに腹を立て嫌がらせをしていた事を詫びた。そしてポリフィーリイの所で昨夜あったことを何もかも話していた事も告げた。つまり、贈物とは彼の事だったのである。彼の憂いは何もかも消え去った。
ラスコーリニコフはソーニャの父親の葬式へと道を急いだ。
第五編
ルージンが大家のレベジャートニコフに頼んでソーニャを呼んでもらった。訪れたソーニャに対して、ルージンは義金募集をすればどうかと勧める。さらにそれについてもっと詳細な話をしたいと申し入れ、それに先んじて自分もわずかながらといい十ルーブリをソーニャに差し出すのであった。レベジャートニコフはその行為に感動して次のように言った。
「わたしは何もかも聞きました。何もかも見ました。」特に最後の言葉に力を入れながら、彼はこう言った。P167
カチェリーナは夫マルメラードフの葬儀の後に法事を開いた。そこには幾人もの人が集まってきていて、ラスコーリニコフもそこに加わった。法事が進むにつれてカチェリーナと大家で客であるアマリヤとの間に口論が起きた。彼女たちは父親や自分達の素性などで激しい口論を戦わせた。これはソーニャの仕事に対する偏見や嫌悪などが原因としてあるものらしかった。
その口論の最中にルージンが訪れた。ルージンはソーニャが百ルーブリを盗んだと主張し始める。
あなたがお尋ね下すったすぐ後で、わたしの所有にかかる百ルーブリ紙幣が、わたしのテーブルの上から一枚なくなったのです。もしどうかしてあなたがそれをご存じで、それがいまどこにあるか教えて下すったら、わたしは名誉にかけて、またここにおられる皆さんを証人として、あなたに誓っていいます。が、ことはそれで済んでしまうのです。
「わたし存じません。わたし少しも存じません」やっとソーニャは弱々しい声で答えた。P193
ソーニャが無実を訴えようとポケットの中身を全て出そうとした時、紙切れが落ちた。ルージンが拾い上げてみるとそれは百ルーブリ紙幣であった。誰もが彼女が盗んだと思った。
憐れな肺病やみの母親カチェリ―ナだけが彼女の無実を信じ訴えるが、誰も説得できなかった。ルージンはそこに同情するように次のように言い放った。
皆さん!わたしは何です、いま個人的に侮辱まで受けたのではありますが、同情の意味でまあ赦して上げてもかまいません。いいですか、マドモアゼーユ、今のこの恥辱を将来の教訓になさるがいい。P202
ルージンはラスコーリニコフの方をちらと見た。彼は燃えるような眼差しで彼を見つめていた。
なんという卑劣なことだ! P203
と戸口の所で叫んだ者がいた。レベジャートニコフであった。彼はルージンを卑劣と呼び、悪党と呼び、下劣と呼んだ。彼はルージンの目撃者であった。彼は言う。
僕が見たんだ、僕が見たんだ!
あなたが紙幣をそっと押し込むのを。P204
ルージンはラスコーリニコフにとって大切と思われるソーニャを貶める事で、彼と妹を仲違いさせ、ドゥーニャをもういちど手にいれようと画策したのであった。その計画は潰えた。母プリヘーリヤと妹ドゥーニャをペテルブルグに連れてくるという役を与えられたルージンはこうして物語から退場する。
その日の夜遅くソーニャの元をラスコーリニコフは訪れる。
さあ、ソフィア・セミョーノヴナ、ひとつ見てみようじゃありませんか、今度はあなたが何をいい出すか!P216
ソーニャと二人きりになって、そこで彼は聞く。もしルージンの企みを知っていたなら、ルージンを破滅させるべきか、それともそれを見過ごしソーニャが監獄に入るべきか。残された家族は破滅し死に至るとしたらどうすべきか。あなたならどうしますかと。
ソーニャは其れに答えていう。
たってわたし、神様の御心を知るわけに行きませんもの。
誰は生きるべきで、誰は生きるべきでないなんて、いったい誰がわたしをそんな裁き手にしたのでしょう? P221
泣き始めた彼女を見つめていた。そこには憎悪があり愛があった。彼は呟いた。
何だって僕はお前ばかりを苦しめに来たんだろう? P223
彼はなぜソーニャに告解しようとしたのだろう。ラスコーリニコフはアリョーナを殺しそれを隠した。しかしソーニャに予告し、いま告白したのだろうか。それをラスコーリニコフの意識から知ろうとする道は閉ざされている。彼の意識を通してそれは理解できない。彼はなぜ語りたかったのか、ただ語る事で己を理解しようとした、としか言い様がない。
ラスコーリニコフはソーニャの味わった屈辱を知っていた。その屈辱が彼を告白へと誘う。彼はソーニャの苦しみを試してみたかった。それが彼女と苦しみを分かち合う事だと知らずに。彼は告げる。老婆を殺害したのは自分であると。ソーニャはそれを聞き、慄いたがすぐにラスコーリニコフを抱きしめた。少なくともラスコーリニコフは二人きりであったから秘密を共有できたのだ。
「ええ、ええ。いつまでも、どこまでも!」とソーニャはいった。「わたしはあなたについて行く、どこへでもついて行く!おお神様!ああ、わたしは不幸な女です!なぜ、なぜわたしはもっと早く、あなたを知らなかったのでしょう!なぜあなたはもっと早く来て下さらなかったの? P228
飢えていた為に殺したのだとしたら、ナポレオンになるために殺したとしたら、学費のために殺したのだとしたら。ラスコーリニコフは幾つもの思い付く限りの理由をソーニャの前で語った。渇きを癒すために殺した。
僕は今、ついたった今、昨日お前をどこへつれて行こうといったのか、はじめてわかったよ!昨日ああいった時には、僕自身もどこかわからなかったんだ。僕が頼んだのも、ここへやって来たのも、目的はたった一つだ。P231
『人間は虱かどうか?』などという問いを自ら発する以上、人間は僕にとって虱じゃない、ただこんな考えを夢にも頭に思い浮かべない人にとってのみ、何ら疑問なしに進み得る人にとってのみ、初めて人間は虱であることを、P240
俺はふるえおののく一介の虫けらか、それとも権利を持つものか・・・」
「人を殺す?人を殺す権利を持ってるんですって?」P241
自分が虱であることを証明するために人を殺した。その試験をするためだけに犯行に及んだと告白する。そしてラスコーリニコフはソーニャに対して問う、僕はどうしたらいい?と。彼に対してソーニャは謂う。
お立ちなさい。すぐに今すぐ行って四つ辻にお立ちなさい。そして身をかがめてまずあなたが穢した大地に接吻なさい。それから世界中四方八方へ頭を下げてはっきり聞こえるように大きな声で。P242
そこへレベジャートニコフがソーニャを訪問し母カチェリーナの発狂を告げた。カチェリーナは往来で発狂したかのように子供達を踊らせている。それは踊り乞食になろうとする哀しみであった。そこへスヴィドリガイロフがやってくる。彼はソーニャの子供達を金銭面で援助することを約束した。
往来で倒れたままソーニャの母カチェリーナは死んだ。死を看取った部屋の隅でスヴィドリガイロフはラスコーリニコフにソーニャへの告白を盗み聞きした事を告げる。
第六編
ラスコーリニコフは混乱していた。ふたりの秘密がそうではないと知ったから。ラズーミヒンが訪れてポルフィーリイから犯人が捕まったと聞く。彼は急に霧が晴れたように気になった。
ポルフィーリイのところでミコールカの一件を見て以来、おれは出口もない狭くるしい中で、息がつまりそうだった。ミコールカ事件の後で、同じ日にソーニャのところでも一番あった。おれはその一幕を、予期したのとは全然ちがった結末にしてしまった・・・つまり瞬間的に、急激に心が弱ったのだ。P285
一人になったラスコーリニコフのもとへ不意にポルフィーリイが来訪した。これが最後の対決だった。
そりゃあなたが殺したんですよ。ロジオン・ロマーヌイチ。P303
あなたは今ちと空気が足りない。空気が、空気がな。P310
あなたはいつ僕を逮捕するつもりです?
さあ、まだ一日半か二日くらいは、あなたに散歩させて上げましょう。P311
二人は話しを終え別れた。ラスコーリニコフは勝利を確信していたが、確かめなければならない事があると考え、自分の有罪を決定的にする事ができるスヴィドリガイロフを訪れた。スヴィドリガイロフはその秘密を誰かに話す気など毛頭ないと告げる。
あなたが何者かですって? P327
彼は秘密をある事に使う計画を企てていた。
シルレルよ、シルレルよ、わがシルレルよ。P349
ラスコーリニコフは彼が妹に何かをしようとしている事に気付いた。
さあ、あなたは右へ、わたしは左へ。でなければ、その反対かな。とにかく、adieu, mon plaisir. (さらば、わが喜びよ) またお目にかかりましょう。P350
スヴィドリガイロフはエラーギン島に行くふりをしてラスコーリニコフを撒いた。そしてまんまとふたりきりでドゥーニャと密会したのだ。兄ラスコーリニコフの秘密を使ってドゥーニャを自分のものにしようと画策した上での行動だった。自分はこれでドゥーニャに愛されると彼は信じ込んでいた。
あなたが、わずかあなたの一ことで、兄さんは救われるんです!P369
しかしドゥーニャはそれと対峙し決別しはっきりと別離する。
したけりゃ告訴するがいい。一歩たってそこを動いたら!撃ってしまうから。お前は奥さんを毒殺したじゃないか、わたしはちゃんと知っている。お前こそ人殺しだ。P372
拒絶されたスヴィドリガイロフは茫然とする。
もし仮にそれが真実だとしても、それもお前のためなんだ。P373
ドゥーニャはスヴィドリガイロフに向かって銃を撃つ。
「じゃ、愛はないの?」と彼は小声に訊ねた。P375
はっきりと悟ったスヴィドリガイロフはドゥーニャを帰した。ふたりの間には何の秘密もなかった。
中にはまだ弾丸が3つと雷管が一つ残っていた。いま一度撃てるわけだ。P377
スヴィドリガイロフはその夜にソーニャを訪れた。彼女の金銭面での問題を解決した事を告げる。
なあに、アメリカまで行こうというものが、雨を怖れていてどうしますか。P382
そういって雨の中に出て行き一晩飲み明かした。そして最後の夢を見る。それは5つの女の子を助けようとする夢であった。しかしその女の子は絡み付くように彼を締め付けた。
何かしらずうずうしい挑発的なものが、まるで子供らしくないその顔に光っている。それは淫蕩である。それは娼婦 の顔である。P395
スヴィドリガイロフはその夜を苦しんで過ごした。
夜が明けた。スヴィドリガイロフは陽気に通りに出た。
スヴィドリガイロフはピストルを取り出して、引き金を上げた。
いい場所じゃないか。もし聞かれたら、アメリカへ行ったと答えときなさい。P398
彼は引き金を下した。そのピストルだけがドゥーニャと彼とを結ぶ唯一つのそして絶望の中に残った最後のものであった。彼は死んだ。
ラスコーリニコフは母親を訪ねた。そこで彼は母への愛の告白をする。
僕はね、お母さん、僕がいつもお母さんを愛していたことをはっきり知って頂くためにやってきたのです。P404
旅に行くんです。P405
ドゥーニャに告げる。
僕はこの恥辱を逃れるために身を投げようと思ったんだよ。もしおれが今まで自分を強者と思っていたんなら、今だってこんな恥辱を怖れるものかってね。P409
罪?一体どんな罪だい? P410
僕は人類のために善を望んだんだ。P411
「実はね、僕はこの女を相手に度々あのことを話し合ったんだよ。ただこの女ひとりだけと」P413
この女とは熱病で死んだ下宿のお主婦の娘である。
この女もお前と同じように同意はしなかったよ。だらか僕は、あの女がいまいないのを喜んでいる。P414
思い出に中にいる彼女だけが彼を愛したただひとりの人かも知れなかった。
なぜ今そのほうへ進んでいるのだろう? P415
ラスコーリニコフはソーニャの部屋を訪れて言う。
俺はやくざな卑劣漢だ、卑劣漢だ!P421
日が明けた。ラスコーリニコフはソーニャが言った言葉を思い出しその通りにする事に幸せを感じた。
土の面に頭をかがめ歓喜と幸福を感じながらその汚い土に接吻した。P423
それから警察へと入った。そこで自首しようとした時に、しかし自分に気付かぬ警察に彼はまだ助かると思い警察から出てきた。そこで
死人のように真っ蒼な顔のソーニャが立っていて、何とも言えない恐ろしい目付きで彼を見つめていた。P432
それを見つけたラスコーリニコフは
彼はしばらく立っていて、やがてにたりと笑うと、また階上の警察へと引返した。
そして自らの犯行を警察に告げたのである。
エピローグ
シベリアで 10 年の刑を受けたラスコーリニコフの後を追ってソーニャも刑務所の近くに居を構えた。彼女はラスコーリニコフの近況を手紙でドゥーニャやラズーミヒンに書き送っていた。
突然、彼の傍らにソーニャが訪れた。P455
彼女はついに悟った。男が自分を愛している。しかも限りなく愛しているという事は、彼女にとってもう何の疑いもなかった。ついにこの時間が到来したのである。
突如としてエピローグは小説史上でもっとも甘美で美しく終わる。作者はここで勝った、とそう叫んでいるはずである。
しかしそこにはもう新しい物語が始まっている。P458
罪と罰 あらまし - フョードル・ドストエフスキー
罪と罰 (上) あらすじ - フョードル・ドストエフスキー
罪と罰 - フョードル・ドストエフスキー, 米川正夫訳
(退屈かと問われれば退屈、だがこのエピローグは小説史上 No.1)
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