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2024年6月1日土曜日

その後のジブリ

シュナが持ち帰ったのは麦だけではなかった。それ以降、魔法が使える人が生まれるようになったのである。不思議な光線を浴びたせいかも知れないし、持ち帰った麦のせいかも知れなかった。

そうして、魔法のある社会が生まれた。それを食べた野生動物も言葉をしゃべるようになった。人間との争いは不可避が始まった。そうして人間同士も争いが魔法という形で行われるようになった。

現在、この魔法世界が残っていないのは、魔法使いたちの間で大戦争が起きたからである。ハウルたちが最後の大魔法時代を生きた世代になる。

その戦争後も魔法世界が完全に消えた訳ではないが、次第に世界の片隅に追いやられてゆくようになった。人間の世界は技術と科学が牽引する時代へと変わったのである。

キキのお母さんは、その昔、サリマンを師匠とする生徒であった。戦争に魔法が使われる時代を終わらせようとカルシファー戦争に参加した一人でもある。グランマンマーレも海神としてこの大戦に参加している。

魔法を使った戦争は、多くの人にとっては被害しか生まないものであった。魔法を使わない人たちにとってそれはどうにも抵抗しえないものであった。だから魔法による正しい秩序が理想的であると考える人々がいた。

だが魔法使いが王となって統治する国が生まれた事がなかった。なぜなら、魔法使いは王になれないという制約が掛かっていたからである。この制約のため王となった魔法使いは魔法を失った。そのため魔法使いは王に使える事で世界の秩序を維持しようと努めてきたのである。

しかし最後の魔法使いたちは魔法が人々の幸せを破壊していると考えた。人間は人間の力で未来を切り開くと考えた魔法使いたちがいた。

ラピュタはこの大戦争の時に作られた脱出装置であり、飛行石が使われた。飛行石はずっと古い時代から伝わってきた魔法力のある石であるが、この時代に多くの魔法を石の中に注入しそれまでにない程の強い力を持つ石になった。

この戦争は、魔法を封じ込める事で終わった。多くの魔法使いたちには僅かな力しか残らなかった。新しい時代にひっそりと生きる事を選択した人もいれば、社会の中に溶け込み人間として生きてゆく人もいた。新しい時代が始まった。

それでもこの戦争で封じ込められた魔法力が消えた訳ではなかった。地球の深くでその一部は、地下水のような大河となって、世界のあちこちに流れ込んでいる。

こうして、大魔法時代は終焉を迎えたが、眞人が青さぎと旅した下の世界にもこの魔法力が流れ込んでいる。湯婆婆らが生きる辺境世界にもこの力が流れ込んでいる。火の七日間以後の庭も墓所もこのエネルギーを取り出して維持されている。

◇◇◇ その後の魔女の宅急便 ◇◇◇

キキは一人の息子を生む。

それが、のちのポルコ・ロッソである。

既に飛べなくなったお婆さんの変わりに空を飛ぶ事を選んだやさしい息子であったが、不幸にも女癖が悪かった。ジーナとの関係を勘違いした母親によって絶対に解けない魔法で豚の姿にされてしまう。

彼は軍を去り探偵の真似事をして生計を立てるようになった。その時に晩年のホームズと出会い、その助手として手助けをし彼から探偵のイロハを教わった。

マダム・ジーナが、おソノの子である事は作中では触れられていない。遠い未来に空を駆けるアスベルは、マルコの遠い子孫であるし、ドーラも子孫である。

◇◇◇ その後のトトロ ◇◇◇

さつきは、メイと別れた。

「メイ、この森はもう造成されるのよ、町が大きくなってゆくのはいい事なのよ、仕方ないことなの。何故それがわからないの。」

一人、道をとぼとぼと歩いていくさつきを見ながら、メイはつぶやいた。

「私は一人になってもこの森を守る。」

見上げれば、あの大きなブナの木が夏の風に揺れていた。あれから、10年、高度成長にともない、片田舎だったこの地域にも開発の波が押し寄せてきていた。

「あ、お父さん、」

さつきは、会社から帰る父と出会った。当時の家はそのまま、何も変わっていない。

しかし、家のまわりの景観は昔の面影が薄くなりつつあった。

「メイは、あれか、また立てこもりかい?」

「うん、あのこ、昔っからどっか強情っ張りな所があるから。」

「そうだね、まあ、頑張れるのはいいことだよ。」

「じゃ、あたし、家に戻るね。保育園にも寄る時間だし。」

「ああ、今度はおチビちゃんたちも連れておいで。」

清太が餓死した10年後にトトロがさつきたちを助けた。

そのメイが守りたかったこの森に正吉たちが生まれ人間へと戦いを挑む事のはもう少し先の話である。

この森を、遥か昔にアシタカが通り抜けている事は既に誰も覚えていない。その時に起きた不思議な出会いの話はまた別の機会にしよう。

◇◇◇ その後のラピュタ ◇◇◇

シータの生まれたゴンドアの谷に戻ったパズーたちは、湖の底にラピュタの遺産を見つける。

このラピュタの遺産を何年もかけて改造しパズーは一隻の潜水艦に建造した。これが後のノーチラス号である。

この潜水艦をネオ船長に託した後のパズーたちの消息は不明である。ナディアはパズーとシータの孫にあたる。

ラピュタは、地球の衛星軌道をずうっと周っていたいたが、核兵器を遥かに超える「超磁力兵器」もその内実は飛行石から取り出したエネルギーを使用している。

これに反対したラオ博士たちは、太陽エネルギーシステムという平和利用を開発した。太陽塔にエネルギー供給した衛星には、その内部に飛行石の欠片が埋め込まれている。

その後もラピュタは、地球の周りを周回し続けた。

その後の火の七日間で巨神兵たちにエネルギーを供給したのもこの飛行石である。その時に飛行石は全てのエネルギーを失い、輝きを失った。前文明の滅亡は巨神兵によってではなく、落下したラピュタによる小惑星の追突と同程度の被害を地球にもたらした事が原因、と言うべきである。

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