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2018年4月7日土曜日

古代知的生命体への考察

経緯

太古の地層から古い知的生命体の痕跡が見つかり始めたのは、今世紀に入ってからのことだ。少ない痕跡からも、彼らがかなり高度な知的活動をしていた事が示されている。

特に、月に埋もれていた遺跡には、世界中を驚愕の渕沼に飛び込ませるものがあった。彼らへの知見が増えてきたことは喜ばしいことである。我々以外にもこの星に知的生命体が存在していたのである。そして彼らがなぜ絶滅したのかを知ることは、我々の未来にとっても重要な水中の明かりになる。

そろそろ彼らの生態について一般向けに軽い切り口で語るのもよい時期であろう。太古に滅んだ彼らについて知ることは、我々の世界を拡大する本能を十分に満足させる。太古の遺跡(主に軌道衛星と月遺跡)から推測される彼らの生態は非常に興味深い。この新しい知見を読者諸君も十分に堪能し素潜りされたい。

Summary

月で見つかったミイラを詳しく調べる事で、ここ10年の超古代生物学は著しく発展してきた。特に彼らが使用していた電子機器、そこに残っていたデータの復旧が大きなメタモフィーシスを果たした。これらのデジタルデータを再生することで太古世界の世界について多くの発見をすることができるようになった。

発見されたミイラを解剖した結果、DNA の類似性からも、彼らが猿の仲間である事は間違いない。猿は、脊椎動物のうち哺乳類に属する主に森林に住む動物であるが、現生種と最も異なる特徴が大脳のサイズである。その大きさは我々にも匹敵しており、これが知性獲得をしたひとつの理由と考えられる。我々は、これら月で見つかった猿を「ルナハイエンシス」と名付けた。「月に行った高度な猿」という意味である。

解析できたのが0.1%未満とはいえ調査した映像記録からは、彼らの興味深い生殖行動が観察された。その生態には様々なバリエーションがあって、それは彼らが単一の種ではなく、我々と同様に複数の類似種が同時に進化しひとつのコミュニティを形成した可能性を強く示唆している。この仮説はまだ早急なものなので裏付けに乏しい。そのため数年で覆る可能性があることには留意されたい。

今、分かっている限り、彼らの生殖形態はとても多様性があり、種の違いを考えなければ合理的な説明ができない。ご存知のとおり、生殖活動に異常が発生した種は近からず絶滅する。そのため、自然状態にある限り、生殖行動は本能に強く影響されたものになる。自然と、生殖活動は生命活動の中でも最も原始的で単純な行動として表現されやすい。個体差よりも種差の方が強く現れ易いのである。

生態的特徴(解剖学からの推測)

ルナハイエンシスが残した月の住環境、宇宙潜を調べて分かった事だが、彼らはとても乾燥を好む猿だったようである。現生の猿のように全身を毛では覆われていない。多くの毛は退化して薄く短くなっている。一部の特定の箇所にだけ毛が残っている。これがどのような進化的な優位性を持ったかは不明である。ただ、彼らのすべすべの肌は我々のと極めてよく類似していて親近感が沸く。

彼らは肌の上に独自の化学物質を塗り込んでいた。既に有機物の分解が進んでいるので特定は困難であったが、彼らも粘膜の保護をしていたようである。我々が乾燥から身を守るために水分と粘膜を使用しているのと似ている。

彼らの指は5本である。これも陸生脊椎動物で共通したものであって我々と同じである。よって、彼らの数学も基本は 10 進法を採用していた。ただしすべてが 10 進数に統一されていたわけではない。

時間は我々と同様の 6進数を採用していた。これは太古の時代に、日の出、日の入りで 1日を 2分割し、さらに真昼と真夜中で 4分割したことに起因する。4 を含む 10 に最も近い公倍数は 4 か 12 で、8 は 2の乗数なので 3 を含む 12 を採用したためであろう。地球に発生する脊椎動物系の時間概念は自然と 6 が基数になるようだ。この考え方は円の角度にも影響するはずである。

ふたつの太陽をもつ恒星システムや 5 本ではない生命体ならば違う進数を採用するものと思われる。こうして我々も彼らにも様々な歴史的経緯を経ながら文明を構築していったものと推察される。

先にも書いたように彼らの体表は乾燥していたので、指先には滑り止めとなる文様が出来ている。これは現生種の猿と同様のものである。我々では粘膜が滑り止めになっているので、この違いは面白い。これも収斂進化のひとつと言えよう。

食性は雑食性である。ただし消化器官系が極めて弱いようで、口はとても小さく、発達した顎で食物を咀嚼して飲み込まなければならない。我々が丸ごと飲み込むのとは違うようである。咀嚼して飲み込むため喉ごしも小さな味わいしか経験できなかったであろう。

我々にとって食事の楽しみの最大が喉越しにあるので、彼らが何を楽しみに食事をしていたか想像しにくい。したたるステーキを丸のみする快感は彼らにはなかったようである。もしそんな事をすれば喉が小さいため、たちまち窒息して死亡したであろう。彼らには彼らなりの食事の楽しみがあったはずであるが、解明は今後の課題である。

彼らは喉が狭く声帯でしか声が出せないため、話したり歌ったりするのも、森の猿の遠吠えのような感じであったろう。我々のような重低音合唱団のド迫力を生歌で披露するのは無理だったろう。

ルナハイエンシスの体格は我々より若干大きい。我々と同様に二本足であるが、大腿筋の貧弱さから跳躍力はとても小さいと思われる。ジャンプする高さも距離も大したことはない。これは木の上で生活する種から進化したためで仕方がない話である。我々だって鳥のようには飛べないのと同様だ。いずれにしろ、もし彼らとバスケットボール(※)をすることになれば我々が圧勝するのは間違いない。

(※)地表から7m上に設置したゴールにボールを投げ入れて得点を争う競技。

探査技術(宇宙潜からの推察)

ルナハイエンシスが使用していた宇宙潜から彼らの技術レベルはだいたい把握できている。彼らの記録から、外宇宙に探査機を送った事も分かっている。火星の地中から探査機も発掘できた。彼らが太陽系内を積極的に探査し居住区の拡大、地球生命の他恒星進出を目論んでいた事は疑いようがない。

彼らの最も遠くへ送り出した探査機が、近くの恒星系さえ既に通り過ぎている可能性がある(17km秒と遅いがとても昔なので)。

彼らの探査機ではスイングバイが欠かせなかった。この事実と彼らの時代の太陽重力、惑星配置から、どのようなルートを辿ったかを幾つか計算してみた。中学生でも簡単に理解できるので、興味のある幼生は巻末の付録を参照してみて欲しい。その幾つかには既に探査機を送った。

もしその探査機を捕捉できればこれは凄いことではないだろうか。とは言っても、もっとも深淵まで辿り着いたケース、オールトの雲で漂流しているケースなど様々な可能性がある。必ず見つけ出せるとは言えないが、まるで池にダイブするかのようなわくわくする冒険である。我々よりもずっと先にこの星系を飛び出した先輩たちへのこれは敬意でもある。

繁殖行動(記録資料からの推察)

ルナハイエンシスのピーナは、よく収縮するだけでなく個性的な形状をしている。また個体差も顕著であるようである。現生種の猿と比べてもかなり巨大である。彼らの繁殖活動は通常の交尾が主流であるが、残された記録からは、どうも口でも交接できたようなのである。

これが異なる種が別々の進化をしたのではないかと考えられる最も強力な根拠である。ルナハイエンシスの祖先のうち、あるグループが諸島などに隔離され、そこで独自の進化によって飲み込むことも受精できるように進化したと考えられる。そうして分化した種がまた出会い、そこで同一のコミュニティを形成したのではないかと考えられるのである。

隔離されて進化した複数の種が再び出会って、異なる交接方法がそのまま残された極めて珍しい進化現象と言えよう。更に驚くべきはそれだけではない。交接に特殊な器具を使用しなければ発情できない種や、排泄物を介して受精する種も確認されているのである。我々が観察してきた所では、道具も紐、筒、棒、火などを多岐に渡っており、このような多大なコストを払わなければ繁殖できないとすれば、個体数が減少するのも納得である。この辺りに彼らが絶滅した理由があるのではないか。

彼らは陸生生物なので、我々のような繁殖場は必要としなかった。我々の場合はどうしても繁殖プールが必要である。生まれた子供たちもしばらくは水中で暮らす。尻尾が消えて初めて成人である。この辺りの違いが教育過程にどのような影響を与えたかは興味深いことである。

ルナハイエンシスは我々と同様に大勢で受精する事もあったようだ。それも常にというわけではなく、一対の雌雄で受精することもあれば、複数で受精することもある。不思議である。また、多くの生命種で観察されるように、雄雄や雌雌などの疑似繁殖行動も観察される。この多様性は我々と変わらない。

おわりに

ルナハイエンシスの絶滅理由は分かっていない。古い地層を調査しているが、彼らの遺跡からは核爆発の形跡は認められない。彼らの極めて幼稚な原子力技術では、核廃棄物の処分が必要なはずだが、処分地層もなさそうである。彼らの技術力では核廃棄物を無害化することは出来なかったはずなので、どこかにあると思われるのだが。

現在は、ミイラから取り出した DNA を修復し、卵から発生させることを研究している。彼らの子供を誕生させれば、生きたよい標本が手に入る。そうして我々の社会で育ててみたいと考えている。そうすれば彼らの知能レベルや習性などより詳しい知見が得られるだろう。

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