stylesheet

2015年1月20日火曜日

機動警察パトレイバー - ゆうき まさみ

ゆうきまさみがパトレイバーで描いた常識ほどの慧眼はそうはない。社会は一人の力で変えられるものではないが、自分の仕事に取り組む事が社会を変えると信じる。それを支えるものが常識、知っておかなければならぬのが無力。

誰もが自分の倫理や立場から行動を起こす。犯罪者でさえ普通の人間として描く。パトレイバーで児童ポルノと人身売買が描く。そこにも問題の本質を逃さない常識の力強さを感じる。熱狂など必要ない。粛々とした正しさのある世界。

企業の技術者をこれほどリアリティある人間として描いた作家は他にはいまい。公務員を描けばこの人の右に出る者はいない。日常のまっとうさに支えられた世界に、空想が溶け込んでいる。

福島第一原子力発電所の事故からロボットの現実味が増している。人型ロボットの基礎技術は、義手や義足、パワードスーツと交換可能である。このふたつの分野は連動して発展してゆくだろう。パラリンピックの記録がオリンピックを凌駕する未来はすぐそこにある。

パワードスーツは介護の現場での使用がもう始まっている。軍用でも正式採用されるだろう。原子力発電所事故の切り札として、1tの鉛を纏って動くロボット、小型のカメラを搭載した虫、蛇のように水陸を移動するロボットも投入されるだろう。

ロボットが実現した時、それと最初に対面しなければならないのは役所である。彼らが導入のガイドラインを決め法制化しなければ使用できない。認可であれ免許であれ、それは安全性と社会貢献だけの問題ではない。無線や個人情報など関連法令も多数あるだろう。トラックの荷卸しに使うなら国交省、介護で使用するなら厚生省、軍事ならば防衛省と、所轄官庁も広い。

よってこれらのロボットに正式名称を与えるのも官庁である。防衛省は何と呼ぶか。警察は何と呼ぶか。ちなみにパトカーの正式名称は、交通取締用四輪車(交通取締用無線自動車)、無線警ら車(警ら用無線自動車)と言うそうである。

ロボットは何足歩行であれ地上を移動するのでカテゴリーは車だろう。バイクは二輪車、車は四輪車、ロボットは二足車、四足車と呼ばれるのかしらん。例えば21式戦闘二足車とか、34式輸送六足車とか。

「あの多足車、幾つの足があるんです?」
「あれは片方に16脚、合計32脚あります。」

そういう会話が当たり前の世界。パトレイバーは、もし二足ロボットが国交省に認可されたとしたら?という所から始まった。そうすると警察組織にも導入されるだろう、軍用もあるだろう。どうやって社会にロボットが浸透していったのか、社会という側面から攻めていかないと成立しないリアリティがある。行政がそれをどう取り扱うか、どの作品もここをなおざりにはしない。

0 件のコメント:

コメントを投稿