君は地球人か?
私はクラナスのファープ。宇宙パトロール隊員だ。
エレノアにミノオを護送中、その一体に逃げられてしまったのだ。そのミノオを追って私は地球にきた。
ミノオはこの近くに降りたはずだ。地球時間で10日程前になる。
ミノオは寄生体だ。他の生命に寄生して生きる。そしてミノオは寄生した生命の生殖で繁殖する。
ミノオに寄生された生命は約10日でミノオの意識に占領されるがしかしその生命は一年ほどで死に至る。
今のうちに、ミノオの個体数の少ないうちに奴等を根絶しなければ地球人は滅びるだろう。
ミノオを根絶させる方法は唯ひとつ、ミノオに寄生された生命を殺すコトだ。君にミノオに寄生された生命を見分ける方法を授ける。
君がミノオを倒すのだ。
私もできればそうしたい。だが私にはその時間がないのだ。私はもうすぐ死ぬ。私はこの星の大気では生きられないのだ。もうすぐ...
自分しか知らぬ、他の誰も知らぬ証明も不可能なものが理由になるのか。それは妄想かも知れぬ。客観的に見れば妄想に違いない。もしそれが妄想ならばただの犯罪だ。だが、もしそれが妄想でなかったなら?
もしかしたら、ぼくは異常なのかも知れない
けれど、もしもそうではなかったら
人類はいま、滅亡の淵にいる
そのような決断を自分ひとりで決めなければならない。主人公は孤独だ。ことの顛末を調べた刑事たちは恋愛の嫉妬からくる怨恨による犯罪と結論づけるだろう。だれがこんな話を信じるだろうか。
人は他人と共有せずに客観を得ることなどできない。私しか知らない根拠では誰もが不可解と言うだろう。
それでも決断は人の数だけある。この物語もそのひとつだ。
決断の結果は受け入れるしかない。もしその決断が単なる精神錯乱だとしても、それで決まりならば安心できる。人は結果を待っているときが不安なのだ。脳があらゆることを想定しようとするから。
ミノオもファープもいないのよ。それはあなたの虚構なの。
誰もその決断を引き受けることなど出来ない。ただひとりに託されたのだから。
そしてそうしなかった時の結果など誰にもわかりはしない。証明できないから。だから引き受けるしかない。
全人類の未来をひとりの若者が背負う。どちらに転んでも彼には未来がない。何も起きないならば彼はただの犯罪者か人類の救世主のどちらかだ。何も起きなければ世間では日常の中で突発した異常な犯罪者に過ぎない。彼がその答えを知ることはない。どちらを選ぶ?
そうかも知れない。
人生は幾つもの結果の積み重ねだ。試験に合格したり落ちたり、誰かと出会ったり別れたり。そういうものが人生を彩る。しかし断じて結果の集合が人生ではない。人は結果を得るために生まれたのではないし、生きているのでもないし、死ぬのでもない。
決断が人生なら、決断しないのも人生である。何気なく通り過ぎた事も人生だ。いつも気にもしないその道をもし曲がっていたら、もしかしたらもうこの世にはいないかも知れない。
ミノオはいなかった。ファープだっていなかった。
決断しようが決断すまいが立ち止まろうが通り過ぎようが人生は流れてゆく。決断したら結果が欲しいだろう。だが決断しなくても結果は刻々と人に降り注いでいる。
ではなぜ決断には結果が欲しいのだろうか。不安や焦燥の中で自分の決断に答えを求めるのか。それは立ち止まっているからだろう。答えが訪れるのではない。答えをつまかえなければそこから動けないのだ。どんな答えでも間違えていようとも答えが要る。
何故か。結果を知らなければ人は決断を忘却できないから。
おれは明子が憎かった。明子を抱いた加藤が悪かった。カッコが良くてスマートでもてる伊吹が憎かった。
けれどもしもそうではなかったら
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