巨大な勢力を伴った大型の台風19号は間もなく関東に上陸しようとしています。
関東地方には甚大な被害が予想されます。ただちに危険地域の方は避難してください。これから各避難所のご案内を申し上げます。まずは江戸川区、次に江東区、...
気象庁の予報によれば風速40メートル以上の暴風圏が本日未明には首都圏を直撃します。
台風の上陸にともなう強風により海上施設が鳴動、湾岸に林立する百数十の超高層ビルが低周波の咆哮をあげ、首都圏のみならず、北関東、甲信まで及ぶ範囲で共鳴し、停止していたはずのレイバーを再起動する。起動したレイバーがどんなプログラムで動くか。その結果は誰にも明言できないでしょう。
湾岸および再開発地区をはじめ、地下1000メートルのジオフロント、さらに原発の炉心部でもレイバーは稼働中であります。それらがすべてHOSに置き換えられた訳ではありませんが、HOSと接触したレイバーがどれだけ汚染・感染されたかは把握できていません。
ソースコードは企業が保持しているとはいえ、一部に難読化、バイナリしか残されていない部分があります。そんな管理のOSが主流となるのもどうかという気もしますが、まぁ今は関係ない話です。この未解析の箇所にどのようなコードが潜んでいるか。まだ解析中であります。
しかし、それは電源ダウン、バッテリーの取り外し、LAN、WANなどの周辺機器のシャットダウンにより相当に防止されていると聞いておるが?
幾ら本体のメモリ内に潜伏していたとしても電源ダウンで揮発性のメモリにコードが残るとは思えないのだが。
確かにバッテリーを外している場合は問題ないのでしょう。しかし、電源ダウン程度ではレイバーの一部の電気回路は生きております。車だって外部からの遠隔スイッチに反応するでしょう。それと同じです。
この際、一度でもHOSと接触したレイバーはすべて汚染されていると仮定すべきと専門家の意見も一致しております。台風の進路を変えるか。超高層をなぎ倒すか。首都圏のレイバーを全て解体するか。それとも。四者択一。フェールセーフで決断をお願いします。
なにより、台風がしでかした事であれば、それが何であれ責任がどうこうという問題にはならんと思いますが如何でしょう。何せ台風のすることですから。
無論だ。天災ならばいた仕方ない。
後藤警部補、部署へ戻ります。
ねえ、いったい何がはじまるのさ?
箱舟をぶっ潰すのさ。
後始末があるからと台風の中を各庁への説明へと向かった後藤隊長。
あなたも損な役回りね、と南雲は送り出したのであった。
しかしHOSに乗っ取られたゼロの前では人間が操縦する98式は敵ではなかった。
反射速度も耐久Gの大きさも圧倒的に無人機が有利だったのである。腕をもがれ電装系のケーブルが派手にむき出しになりカバーの外に垂れ下がったアルフォンスが箱舟の一角に横たわっている。バチバチと時々雨に濡れたバッテリーがショートする音がする。台風の雨に降られオイルが流されてゆく。
香貴花はゼロを捨てて外への脱出には成功したが、飛び降りる時に足を骨折してもう動けない。野明はイングラムの操縦席で気を失っている。もうどうしようもない。ゼロは強すぎた。
ケガをした二人を救出するため、遊馬や進士らが風の吹き荒れる中を外壁沿いに進む。海飛沫が飛び散っているのか、何か塩辛い。南雲隊長が退去する命令を発令。後始末を粛々と確実にこなしてゆく。ふいに誰かの口から出る俺たちは負けたんだ。
このまま台風が来たら関東一円のレイバーが暴走をおこしてしまうわ。と独り言ちする南雲。
暗くなる司令部。停電よ、風が強くなってきたのね。。。
緊急用の予備電源で僅かな明るさを取り戻した暗い部屋の中から南雲隊長が湾岸工事地区の方を見つめている。くやしい、でもこれから始まる大惨事を思えば立ち止まってはいられない。。。
その時、押し入れの中から小さな竜巻が。
あ、フー子、叫ぶ南雲。
普段はパトレイバーを送り出す格納庫からフー子が勢いよく飛び出してゆく。
テレビからはアナウンサーの声が聞こえてくる。
日本から飛び出した台風が大型台風にぶつかりました。
箱舟の上空でぶつかり合う二つの台風。ゼロが風で浮かび上がり海に落下する。手を何度も上げてもがくがイングラムとの格闘で防水系が破損していた。そこから流れ込む大量の海水。電装系、駆動系、関節が海水に浸かって行く。バッテリーが激しくショートし過電流により制御系の基盤ではヒューズが焼き切れた。
HOSの画面がいきなり消えまっ暗になる、各種LEDも次々と滅灯してゆく。最後まで点滅していたハートビートのLEDが次第に速度を落としゆっくりと薄く消えてゆく。流れ込んでいた海水でコックピットがいっぱいになった。
テレビから流れる音声。実に珍しいことが起きています。二つの低気圧が絡み合ったまま動きません。
フー子が戦っているんだ。いつの間にか南雲は両手を合わせている。
フー子まけるな、がんばれ。何度も何度も。何度も。何度も。
風が収まった。二つの台風は消えていた。そこには箱舟が元の姿のまま海上にあった。
小さな風が待っているとつい思い出してしまうんだ。
フー子。。。
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